10月22日(木)、スイスのチューリッヒ大学(University of Zurich)にて、地域共創学部観光学科の菅沼明正准教授が、「Tradition Adrift: The Institutionalization of Cultural Heritage Appreciation in Modern Japan(流転する伝統――近代日本における文化財鑑賞の制度化)」をテーマに講演を行いました。
本講演は、同大アジア・オリエント研究所日本学研究部門のDavid Chiavacci教授の招へいにより、同部門と歴史学科の共催で実施されたものです。
本講演では、2026年に刊行した単著『流転する伝統――修学旅行と文化財鑑賞の歴史社会学』(新曜社)の研究成果をもとに、京都・奈良を訪れて文化財を鑑賞することが、どのように日本社会で広く共有される文化的実践となったのかを論じました。
特に、文化財保護制度、観光、交通、メディア、学校教育の歴史的な関係に注目し、戦時期における大規模な移動が必ずしも文化財鑑賞の普及につながらなかった一方、戦後の修学旅行の反復を通じて、京都・奈良を訪れ、寺社や仏像を文化財として鑑賞する実践が広く定着していったことを示しました。また、伝統が創出された後、意味や担い手、制度的な支えを変化させながら持続する過程を「流転する伝統(Tradition Adrift)」という視点から考察しました。
講演後の質疑応答では、戦前期の知識人による文化財や旅行の捉え方、近世の旅行文化との連続性と非連続性、国際観光が果たした役割など、多岐にわたる質問が寄せられました。また、今後の研究の展開についても質問があり、活発な議論が行われました。
菅沼准教授は現在、ドイツのルール大学ボーフムに客員研究員として滞在し、日本とドイツの文化遺産を対象とした比較歴史社会学的研究を進めています。今回の講演は、そうした在外研究における国際的な学術交流の一環となりました。

【観光学科】




