地域医療に役立つ博物館に 「九州産業大学国際シンポジウム」を開催

 

 九州産業大学美術館は、2月26日(水)、イギリスの「ダリッチ・ピクチャー・ギャラリー」のジェーン・フィンドレー氏【写真左】と認知症患者と介護者の生活の質向上を目指すアメリカの非営利団体「Arts & Minds」共同設立者のキャロリン・ハルピン・ヒーリー氏【写真右】を招いて、日本の学芸員らとともに博物館や美術館が地域医療に果たす役割について語り合う「2020九州産業大学国際シンポジウム~博物館と医療・福祉のよりよい関係~」を開催しました。

 令和元年度文化庁「大学における文化芸術推進事業」の一環として開催したこのシンポジウムは、日本人口の2割が後期高齢者となる2025年を前に、多くの芸術文化に触れることで死亡率が低くなるという「博物館健康ステーション」の考え方を取り入れた、先進的な取り組みを行うイギリスとアメリカの博物館の事例を学ぶことが目的です。

 講演で、フィンドレー氏は、創造的な高齢化を目的に幅広いクリエーティブワークショップなどを行う「健やかな加齢(Aging Well)」プログラムを紹介し、「イギリスでは、治療方針の1つとして“美術館”という選択肢があります。今後は、美術館と医療のスタッフ同士の相互理解とさらなる連携が必要です」と訴えました。

 また、ヒーリー氏は、認知症患者とその介護者を対象にグループでの芸術鑑賞と意見交換、作品制作のワークショップを行うプログラムを紹介し、「芸術を共に体験することで相互に親近感が生まれ、短期的には芸術の楽しさを味わい、長期的には生活の質の向上を享受することになります。芸術には認知症の進行を遅らせる効果があるという実証を長期的に続けていきたい」と語りました。

 その後、地域共創学部地域づくり学科緒方 泉教授がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、現地視察を行った日本の学芸員2人の質問にフィンドレー氏とヒーリー氏が具体例を交えて説明し、全国から集まった約50人の学芸員や教員、学生たちは、取り組みの実行のヒントになればと熱心に聞き入っていました。

【美術館】

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