「博物館浴」国際シンポジウムを開催しました

  2月12日(土)、2022九州産業大学国際シンポジウム「博物館と医療・福祉のよりよい関係」を開催しました。「博物館浴と高齢者の健康、幸福感」をテーマに、日、米、英国の研究者が事例の報告を行い、日本全国の博物館や医療福祉の関係者およそ120人がオンラインで参加しました。

 米国イントレピッド海上航空宇宙博物館のシャーロット・マーティン氏は、認知症の高齢者とその介護者を対象とした「博物館浴」の取り組みとして回想法*プログラムを紹介し、「プログラムで使う昔の写真をあらかじめ郵送し電話で話すなどして、パンデミックの中でも博物館浴の活動を継続し、参加者とつながることができました」と話しました。

 また、ニューヨーク大学附属ランゴーン医療センターのアン・F・ブルグンダー氏は、「耳や目が不自由な人たちも楽しめるように、字幕を入れたり、拡大画像を入れて見やすくしたりするなど工夫をして、オンラインやハイブリットのプログラムを実施することで、家から出るのが困難な方、遠くて参加できない方など全ての人が参加できるようになり、幅広い層の孤立しがちな人たちに、人とのつながりや会話の感覚、帰属感を生むことができました」とオンライン化の効果を語りました。

  参加者からは、「欧米では博物館浴が一般的な取り組みだと知った」「博物館が孤立防止の役割を担っていることが興味深い」「高齢者だけではなく、その介護者も対象としていることが新鮮であった」「回想法だけではなく、アートやダンスなどさまざまなプログラムを博物館が提供していることが面白い」などの意見が寄せられました。

 九州産業大学では、九産大美術館館長である緒方泉教授を中心に、美術館や博物館で過ごすことが健康増進や疾病予防につながることの科学的な実証実験に取り組んでいます。緒方教授は「人生の最後まで、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けながら生活の質を保つために、博物館が地域で果たす新たな価値創造を実現したい」と話しています。

 *回想法:懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い品を見たり、触れたりしながら経験や思い出を語り合う心理療法で、脳を活性化し情緒を安定させることで認知症の進行予防につながる可能性があると言われています。

【美術館】

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