空間設計基礎実習

住居・インテリア学科

 1年生前期の小泉主担当科目。建築設計の根本である「空間をかたちづくる」ことに的を絞って設計課題を行い、空間造形のトレーニングを行う。実体験・想像がしやすい大学キャンパス内を敷地として、目的と主たる操作要素を限定した2課題を行う。課題1:北門イノベーションセンター前広場を居心地の良い空間にアップグレードする〜壁の構成・操作による水平方向に広がる空間〜。課題2:1号館アトリウム空間のアップグレードCUBE in ATRIUM 〜立体的に展開する空間〜。作品提出後には、優秀作品設計者による合同の発表・講評会も実施。

[課題1]
北門イノベーションセンター前広場を居心地の良い空間にアップグレードする
〜壁の構成・操作による移動と滞在のデザイン。水平方向に広がる空間の設計〜

帰りたくなる家 〜ひとりで住んでても、家族と住んでても〜

中野葉世

「まちの日常を受けとめ、暮らしを編み直す集合住宅」。敷地の前面に地域へ開く広場と半屋外の通り庭を設け、買物帰りや通学時の小さな滞留を受け止める“まちの縁側”を計画。1階はラウンジやコモンキッチンなどの共有機能を集約し、上階に多様な住戸を積層。住戸は土間や可動建具を用いて家族構成や時間帯に応じて可変に使える余白を確保。中庭・吹抜け・回遊動線によって光と風、そして住民同士の気配を感じ取れる空間構成。庇や格子、植栽などで日射・視線・通風を調整し、木質素材を活用した温かい居場所。地域―共用部―住戸を段階的に接続し、単身から子育て世帯までが穏やかに共生する住環境を目指している。

繋がる集合住宅

前田宗一郎

「家具のまち」福岡県大川市を舞台に、衰退する木工・建具産業の継承と地域活性を主題とした“繋がる集合住宅”。準工業地域・特別工業地区(敷地840㎡)に、地域へ開く広場と地場材の木フレームで構成する住工複合を計画。南面片流れ屋根が人の流れを内部へ導き、広場中央のシンボルツリーとベンチ、2階テラスが滞留を生む。各住戸は広場に面した「土間」から入り、職人の作業・販売・来訪者との交流が日常化。寝室・浴室・WCは専有、ダイニング・キッチンは共有とし、扉で遮断せず段差で緩やかに公私を切替え、気配と距離感を両立。2M×2Mのモジュールに機能を挿入することで、空間の連続性と関係性を強化し、暮らしと仕事、住民と地域を結び直す提案である。北側空地・南側道路、小中学校近接という文脈から、交流の希薄さを広場と土間で補完する。

Sunset Complex

宮﨑桃

「Sunset Complex」は、沖縄県那覇市豊崎3の準工業地域(敷地約1,340㎡)に計画した、景観と暮らしを結ぶ8戸の集合住宅。青い海と白砂、ヤシ並木、サンセットビーチの眺望といった地域特性を最大化し、街路と連続する“箱”が支柱で持ち上がる立体ボリュームが中庭を囲む。道路向かいの商業施設や至近のバス停により生活利便と回遊性が高い。住戸は間仕切りを最小限とし、視線の抜けと遮断を家具と最小壁で繊細に調整。オーシャンビュー側は開放的に、内部は連続しながら使い方を住まい手に委ねる余白を確保した。段差のある屋上やテラス、通り庭的な共用域が海風と夕景を取り込み、外部の印象を内部に連続させる。8住戸は一体に見せつつ専有性を担保し、観光地の賑わいと地域の生活にほどよく開く、独立性と一体感を両立した計画である。

“つなぐ” 集合住宅

森田さくら

「つなぐ」集合住宅。静かな住宅街と学校に囲まれた鹿児島市清水町の敷地に、地域に開かれた共有スペースを中心に配置し、その周囲を住戸が囲む回遊計画とした。RC造3層、延床約721㎡。1階はカフェと駐車場、2階に図書室、3階に展示室を設け、子どもの作品展示や学習を通じて地域交流を誘発する。住戸は“子育てしやすさ”を重視し、家族の気配が届く開放的な動線と最小限の間仕切り、土間のスタディコーナーを採用。表裏両側から出入りできる動線計画や、天窓・テラスで光や風、雨の気配を取り込み、素材選定と高演色照明で落ち着きと温かさを両立させた、住民と地域をつなぐ拠点を目指す。

巣ごす

福永桃子

■作者の言葉

「巣ごす」は、ハチの巣をヒントにした空間です。蜂蜜をためる・働く・育つという巣の役割を、学生の日常の食事・勉強・交流に置き換え、人目を気にせず安心して過ごせる居場所を目指しました。六角形の規則的な形を基本に、壁の高さを900㎜、1350㎜、1800㎜、2250㎜、2700mmと450㎜の段階的に変え、規則的な構造の中にささやかな不規則さを加えることで、視線の抜けや圧迫感を調整しながら居心地の良さを生み出しています。透明ガラスとすりガラスを組み合わせ、光と影の違いも楽しめる工夫をしています。

■講評

蜂巣の概念を3つに整理し、それらを学生の行為へ翻訳、そして空間化するという視点と方法が大変興味深い。全体構成が、人の流れをうまくコントロールし、また広場を複数の小規模な心地よいスケールの広場に分節している。六角形ユニットの中のベンチなどの作り方や屋根・天井の重ね合わせ方、透明ガラスと半透明ガラスの使い分け、意図的に不規則さを挿入するなど、細かい点にも気を配っていて、それらが空間の質を高めるのに寄与している。

[課題2]
1号館アトリウムのアップグレード:CUBE in ATRIUM:立体的に展開する空間

重ねてつながるCUBE

松谷拓真

■作者の言葉

高さ40cm×奥行き40cmの直方体を積み重ねる事で、キューブ全体を構成しました。直方体をずらして重ねるという単純な操作で人の居場所をつくり、「座って本を読む」「友達と談笑する」といった行為を誘発する空間を生み出しています。また、キューブの中央は視線が抜けるように設計しているため、立体的に人の行為が交差する豊かな空間となっています。

■講評

吹き抜けを中央に包含しながら、長さを異らせた40cmの角材状の部材をずらして積み重ねることで構築された空間であるが、それら部材が下方に対しては、凹凸のある空間を覆う要素として、上方に対しては階段や座る場などの床面として、そして側方に対しても、立体的に機能している点がとても魅力的である。どこからでも通り抜けられる最下階の扱い、周囲にある既存の自習室と繋がる動線を設けるなど、キューブだけでなく、アトリウム全体を魅力ある空間にしている点もとても良い。また40cmを基本モジュールとしながらも、昇降する部分には20cm刻みのハーフステップを用いたり、床やカウンターには別の素材を用いるなど、細かい工夫もデザインの質を高めている。

箱の集合

木山翔太

■作者の言葉

CUBE外からの光と視線を、外壁の不規則なカットがぼかし、木漏れ日のような光を内部空間へ届ける。内部には小さな箱を独立させた。ひとりで静かに過ごす時間と、集まってにぎやかに過ごす時間の空間の質の違いに着目し、やわらかな立体空間を目指して設計した。

■講評

3層吹き抜けのアトリウムの中に置かれた、大胆な切り込みをもつ壁に囲まれた9M角の空間。その内部には不規則な角度を持って、時に外皮から飛び出すような小箱が宙に浮くように配置され、それぞれ個別に階段がつく。動的な空間と静的な空間が、移ろいゆく光と影の中に共存する。人工的なモノで作られ、かつ大胆な形態操作をしながらも、森の中に建つツリーハウスのような自然観を強く感じさせる点が興味深い。このような魅力や特徴が、タイトルにも反映させるとより伝わりやすい作品になったと思う。