理事長、学長、楠風会会長メッセージ-令和2年度学位授与式-

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令和2年度 九州産業大学学位授与式

【学長告辞  泰輔】

 先の見えない時代、何が起きても不思議ではありません。そんな時代に本学を卒業する皆さんに、将来への期待をこめてお祝いを申し上げます。

 時節柄、やはりコロナのことは避けて通れません。これを切り口に、皆さんと本学の立ち位置をとらえ、未来を読んでみたいと思います。

 まず、ざっと見渡すと、新型コロナの感染爆発は、政治と経済、社会と文化、生活の全てに大きな影響を与えました。デジタル化が一気に進んだ良い面もありますが、特に観光、飲食、陸運など非製造業へのダメージが大きく、総じて悪い影響が甚大です。日本も世界も余剰資金が行き場を求めて株高になる一方、格差が一層拡大しています。また、多様性と女性活躍、グリーンリカバリーが新しい価値観となりつつも、定着には時間がかかるようです。さらに世界を見渡すと民主主義の後退が一部見受けられます。まさに予測困難な激動の時代です。

 次に、コロナの教訓を、歴史・科学・対面の3点からとらえます。皆さんには、大学での学びと結びつけ、自らの将来を俯瞰してほしいと思います。

1 歴史に学ぶ

 人類の歴史を見ても、感染症はなくなりません。そもそもウイルスは桁違いに長い歴史をもっています。今後も付き合っていく覚悟が必要です。超長期的には次第に弱毒化しヒトと共生するといわれますが、一般的には数万年のオーダーがかかるとも言われます。また、ワクチンで感染が沈静化するにしても少なくとも数年はかかるでしょう。

 近年の研究で、ウイルスには生物の進化をもたらす意外な側面も明らかになりつつあります。長い目で付き合っていく覚悟と方法論を持つべきです。また感染症だけでなく他の災害と同様、平時の体制だけでは不十分で、非常時を想定した仕組みを作っておくのが肝要です。

 100年前、日本でいわゆるスペイン風邪によるパンデミックが起きました。空前の好景気でしたがバブルが弾け世界不況になり、日本の農村にも飢饉と困窮が襲いました。世界中にファシズムが台頭、気がつけば世界大戦に突き進んでいきました。

 表面の事象を追いかけるだけでなく、歴史の教訓に学ぶことが大事ですね。

2 科学への信頼

 感染症対策で科学を信頼するか否かで結果が分かれました。アメリカ、ブラジルでは世界トップクラスの感染者数と死者数を出しました。科学の軽視に加え、政治への信頼性が低下、またフェイクニュースに多くの人が囚われた結果だと思います。

 他方、台湾、シンガポール、イスラエル、ニュージーランドは感染を押さえこんでいます。科学的根拠を集め、国民を説得し、政府への信頼度が高い国は、抑え込みに成功したと言えます。医学・生物学に加え、政策科学、社会学、心理学も動員し、政策の効果を素早く検証、改善してきたことが教訓的です。さらにワクチンの普及により次第に感染を鎮静化させています。

 課題は政府だけではなく人々の側にもあります。科学的な根拠のないデマに知らぬ間に巻き込まれることが多いです。流す方は高度な技術を使うから厄介です。信じたい都合の良いニュースばかりに触れていると、いわゆるエコーチェンバーに誘導されがちです。

 こうしたことから、何事も思い込みや願望、イメージではなく、データと根拠に基づき批判的・科学的に考え、反対意見も聞きながら冷静に考える習慣をつけたいものですね。

3 対面と文化

 いわゆるリモートには優れた点が多いですが、対面と異なる点に注意です。リモートでは孤独感とストレスが生まれやすいようです。例えば対話には余白がときに必要ですが、オンラインにはありません。また学生には、授業の前後の友人・教員との雑談がモチベーションにつながるようです。感染防止のため、大学は質の高いオンライン授業をめざしていますが、対面授業との違いを理解しておくべきでしょう。

 類人猿の研究から示唆されることがあります。人類の脳はゴリラの3倍の容積をもちます。ヒトの脳は先に大きくなった後、言葉が使えるようになったようです。その大型化の理由は、コミュニケーションつまり互いの共感の積み重ねだそうです。同じ場に集まり、互いに顔と身体を近づけ、場の雰囲気に合わせ自己を抑制しながら触れ合う。これは飲み会、パーティー、祭り、スポーツに共通することですね。場に合わせ、服装、食事、作法を守る、そこから社交が生まれ文化に発展しました。社交によって見知らぬ人とさえ場を共有でき、さらには見知らぬ人を含む大きな集団をつくり大きな事を成し遂げる力をもちました。これは他の動物にない人類の圧倒的な強みです。

 これに関連し、日本社会の特質である礼節の重視が興味深いです。私たちは意見の異なる苦手な人とも場を共有できるよう、社会で訓練されます。ストレートな意見交換は良い面もありますが、争いのリスクも生じます。これを避ける知恵かもしれません。時間をかけ相手を理解できるメリットがあるようです。(但し、あまりわきまえ過ぎるとかえって改革が滞るリスクもあるでしょう)

 このように、対面は人類の文化で欠かせないものといえます。

 まとめますと、一つは、歴史に学び教訓をひきだすこと。非常に長い時間軸で事象をとらえることです。二つ目は、科学への信頼。データと根拠に基づく科学的思考で未来を予測し判断することです。三つ目は、対面を大切にすること、礼節をもって共感することです。多様な相手と向き合うことで、新しい何かが生まれ大きな力となります。

 最後に、皆さんと大学の未来を考えます。

 大学はまさに歴史・科学・対面文化がクロスオーバーする場です。皆さんは若い時に体験したことは重要ですね。

 しかし、それだけではありません。皆さんは今ほんの一部に触れただけですが、大学との関わりは今後劇的に変わります。近い将来、卒業という概念はなくなり、大学と常時つながり活用する時代になるでしょう。

 皆さんのこれからの目的は、人生百年時代に備え総合的な知の基盤を築くことです。長い時間をかけ教養ある自分を完成させることです。それには仕事・立場など必要に応じ大学に戻り、仲間をつくり互いに刺激を与え情報を共有すると効果的ですね。同僚や友人関係だけでは狭いですが、大学には専門や年齢の制限がありません。

 未来の大学は、人生のあらゆる段階、あらゆるニーズに応える教育を与える場となります。業種、資格、職位、昇格、開発、起業など、いつでも、どこでも、どんな専門にもアクセス可能です。多様性あふれる学問、学友、教師と出会い、イノベーションを起こす場になります。

 卒業は、長い人生の中でのほんの一歩に過ぎません。これからは皆さんが社会の主役になります。それには、自らを持続的に成長させてほしいと思います。

 本学は皆さんとともに進化します。皆さんの今後の活躍を期待いたします。

 

【理事長挨拶  津上 賢治】

 ご卒業おめでとうございます。

 これまで、学業や研究に真摯に取り組まれ、学位を授与された卒業生の皆さんにお祝いを申し上げるとともに、卒業生を支えてこられたご家族をはじめ、関係者の方々に心から敬意を表します。

 皆さんはこれまで小中高で卒業を経験されたと思いますが、大学の卒業は人生の最も大きな節目です。それはインプットの人生からアウトプットの人生への転換の大きな一歩の日だからです。皆さんはこれまで、学生として新しい知識や技術を吸収することに努力されてこられましたが、これからは結果を出すことが求められます。もちろん、知識や技術の修得はこれからも大切ですが、社会人として求められるものは、単なる知識の修得だけではなく、それをベースとした新たな提案などのアウトプットです。

 皆さんが歩みだす社会は、大きな変化を遂げようとしています。5G、AI、デジタルトランスフォーメーション、地方分散型社会、テレワークなど、これまでゆっくりと進んでいた様々な変革が、新型コロナウイルス感染症の流行もあり、一気に加速し、社会経済活動全体が急激に変わっています。

 このような変革の時代こそ、社会は若い人たちの豊かな感性とクリエイティブな発想を求めています。台湾政府は35歳のオードリー・タン氏を担当閣僚に起用し、コロナ封じ込めに成功しました。また、環境保護に取り組む団体・政治家は16歳のグレタ・トゥーンベリさんの言葉に耳を傾けています。

 新しい時代は、また真のボーダレスでもあります。インターネットの世界では空間的な距離は全く関係ありません。言葉や文化、習慣が異なる様々な人たちといつでも直接コミュニケーションをとることが当たり前の時代です。

 その中でアウトプットを出すためには、多様性に対する理解が大切です。自分の常識や考え方にとらわれず「世の中には違う考え方の人もいる。」という事実を受け入れる柔軟性を養ってください。私はベルギーや香港、米国での生活を通じて多様な人たちと一緒に働くことの重要性を身をもって経験しましたが、これからの時代は日本で仕事をする上でも大切なことだと思います。

 豊かな感性と柔軟さを持ち、社会にアウトプットし続ける社会人として成長し続けてください。

 皆さんのこれからの人生が、実り多きものであることを心から祈念し、エールを送ります。

 

【同窓会楠風会会長挨拶 吉山 齊一】

祝 辞

 本日晴れて学位を得られました卒業生の皆様、誠におめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

 また、今日までお支えになってこられました保護者の皆様のご労苦に対し、深甚なる敬意を表します。さて、本日皆様を同窓会楠風会の新会員としてお迎えする事は大きな喜びであり心から歓迎いたします。

 本日をもちまして会員総数は約13万名の会員を擁する西日本有数の規模を誇る同窓会組織となりました。同窓会楠風会は人生の基盤造りともいえる九州産業大学の学舎で育んだ仲間達の組織です。私達は卒業生として母校の発展に寄与する事を目的に各種の活動に取り組んでおります。具体的に は①日本人学生・留学生に対する奨学金の給付②課外活動への支援金の給付③就職活動への支援金の給付等を実施しております。また、大学並びに後援会と三者で連携を図り、毎年実施している楠風会の本部・地方本部・支部の総会後の懇親会に学生の希望者を募り参加いただき交流を深めているところです。

 また、各地区での総会並びに懇親会においては、会員同士が親しく交流して人脈形成に努め、お互いの発展に結び付く様、強い絆を築いております。

 卒業生がそれぞれの立場で活躍し発展する事は母校の知名度を向上させ 母校の発展に大いに貢献できる事であります。卒業生の皆様はそれぞれの分野において高度な知識や技術を学ばれ、また強い精神力と心豊かな人間性を身に付けられて卒業し、これから本格的に実社会へ巣立って行かれるのであります。これからの長い人生を心身共に健康に注意され、頑張って欲しいと思います。

 私共同窓会楠風会は皆様と共に歩き 心の支え・仲間として応援して参ります。どうぞ、楠風会を身近な存在として遠慮なく気軽に各活動にご参加くださいませ。楠風会のモットーは「繋がる 拡がる 楠風の絆。」です。私達は心と心の繋がりを最も大切に考えております。

 卒業生の皆さん仲間同士末永くよろしくお願いいたします。

 皆様の今後のご活躍を心より祈念いたしまして、お祝いの言葉といたします。

 

 

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