鴈野先生が日本天文学学会で研究成果を発表しました

 2022年3月3日に、九州産業大学理工学部電気工学科の鴈野重之准教授が、日本天文学会2022年春季年会で、天文学に関する研究を発表しました。

発表題目:Be型ドナーを持つ大質量X線連星系の進化段階としてのULX

発表概要:Ultra-luminous X-ray source (ULX) の放射天体は星質量ブラックホールか,それとも中間質量ブラックホールかという議論が長年にわたってなされてきた.しかし,一部の ULX から X 線パルスが検出されて以降,ULX の中心天体の一部は中性子星であると考えられている.しかし,中性子星がエディントン限界を超える X 線光度を示すメカニズムや,全 ULX 中で中性子星が占める割合などはよくわかっていない.一方,近年の観測により,X線パルスを示す ULX(PULX) の一部は Be 型のドナーを持つことが示唆されている.Be 型ドナーを持つ大質量X 線連星系(HMXB)は,近傍の HMXB の中でも大きな割合を占めており,もしも PULX が Be 型 HMXB の一進化段階に当たるならば,ULX の相当数が中性子星を中心天体として持つ可能性がある.そこで,本研究では,様々な連星パラメタを持つ Be 型 HMXB の進化計算を行うことにより,その進化の過程で PULX となり得るか否かを調べる.また PULX となるならばその期間はどれほどになるのか検討する.Be 型 HMXB がエディントン光度を上回る条件は Karino(2021,MNRAS, 507,1002) で得られたものを用い,連星進化の過程でこの条件を満たすような連星系の初期条件を探る.得られた条件を観測されている Be 型 HMXB の連星パラメタと比較すると,観測されている系のうち,一定数は将来的に PULX となり得ること,またその寿命は十分に長いことが示唆される.とくに,軌道周期が数十日で,軌道離心率の大きな系が PULX として観測されやすいだろうことを議論する.

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