ロボットの進化。

人間と同じ作業が可能なロボットの実現を目指して「手」の進化に取り組む。

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理工学部 機械工学科 村上 剛司 教授 Koji Murakami
人間の手と同じ機能を持ったロボットハンドを目指す。

「ロボット」と聞いてどんなものを思い浮かべるだろうか?おしゃべりができる人間型ロボットやペットロボット、ロボット掃除機など、暮らしの中でもロボットが増えてきた。さらに多くの産業用ロボットがものづくりの現場を支えている。これらのロボットは、今も日々進化を続けているが、ロボットの機能で、まだまだ人間に及ばない部分はどこだろう。村上教授は「それは手の機能です。人間と動物を分けているのは、頭脳はもちろんですが、器用に物をつくり操る手の能力です。これが、ロボットが人間にかなわない部分。人間の手と同じように器用なロボットハンドをつくりたい、これが私のテーマなのです」と語る。一般に人の手の機能は「持つ」と「操る」に分けられる。「持つ」ことは、比較的簡単で、しっかりつかんで運ぶということは、すでにロボットでも実現できている。一方、「操る」ことは難しい。例えば、鉛筆を「持つ」だけなら簡単だが、それを指でクルクル回すという動作が「操る」だ。人間なら何気なくやれる動作だが、実は極めて繊細で複雑な動きなのだ。

繊細な手の感覚をロボットに与えるために。

ロボットハンドを人間の手に近づけるためには、「指の関節を動かす」ことと「感覚を再現する」という二つの要素が必要だ。関節を動かすためのモーターは、すでに小さくて人間より力の強いものが開発されおり、人間の手の動きに近づいている。難しいのは感覚だ。「何かをするとき、素手で行うか、手袋をして行うかで、作業のしやすさは格段に違うでしょう?手袋をすることで、手の感覚が制限されるからです。人間の手は、物体の形状や温度、重さ、摩擦など、様々な情報を瞬時に検知できる優れたセンサーなのです」そこで村上教授が取り組んでいるのが、ロボットハンドに組み込むためのセンサーの開発である。ロボットの指に組み込むには、重過ぎても大き過ぎても使えない。ロボットの指という限られたスペースの中に、いかに組み込み、人間の手のような感覚を実現できるか、試行錯誤の日々が続く。「ようやく、ロボットハンドに必要ないくつかの感覚が分かってきました。今は、いくつかのセンサーを組み合わせていますが、将来的には一つのセンサーで複数の情報を検知できるようになるでしょう。今後ロボットハンドの機能が向上すれば、ロボット全体の作業能力の向上につながり、豊かな暮らしや産業の発展に貢献してくれるでしょう」と、村上教授は、ロボットハンドが拓く未来を語る。

「時間は裏切らない」。だから好きなことを見つけよう。

大学4年生の時、人間と同じように作業ができるロボットを実現したいと考え、ロボットハンドというテーマを選んだ村上教授。指の関節の動かし方から始まった研究は、人間の手の感覚の再現に近づくところまでやってきた。学生時代から、ロボットハンドというテーマを追い続ける村上教授は、今も研究を始めると時間を忘れると笑顔を見せる。「時間は裏切らないんですよ」と村上教授は言う。一つの課題に誰よりも時間をかけて打ち込めば、その分野での第一人者になれる、だから、「それだけの時間をかけてもいい」と思えることを探してほしいと。「例えば、YouTube上には、国内外の大学が研究成果を公開しています。世界中の研究成果に触れられるのは、楽しいですよ。九産大の機械工学科は、ロボットだけでなく、様々なものづくりの技術を学ぶことができます。ものづくりを目指している人は、ここでその楽しさを知ってください」と、これからものづくりを志す学生にエールを送ってくれた。

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