DNAを極める。

DNAの研究を通してがん治療や新製品開発への新たな道を拓く。

  • MASTERING
  • DNA
生命科学部 生命科学科 木山 亮一 教授 Ryoiti Kiyama
がん発生のメカニズムにDNAからアプローチ。

「がん」は、約40年にわたって日本人の死亡原因の1位であり、多くの研究者ががんのメカニズム解明や治療法の確立に向けて研究を進めている。このがんを「DNA」という視点から研究しているのが木山教授だ。木山教授とDNAの出会いは、高校生の時だ。授業でDNAの二重らせん模型を見たとき、「なんて美しい構造だろう」と感動し、DNAの神秘を説き明かそうと心に決めた。それ以来、進学も就職も常に「DNAの研究ができるところ」をキーワードに選択してきた。がんは遺伝子病でもある。通常はがん抑制遺伝子が、がんを抑制しているが、これが壊れるとがんが発生する。木山教授は、ゲノム編集技術を取り入れ、実際にがん抑制遺伝子を壊したとき、細胞にどのような形態的変化があるかの観察を続けている。「がんの研究においては、治療法の確立や薬の開発も必要ですが、がんができるメカニズムを解明する基礎研究も非常に重要です。基礎研究によって、遺伝子の働きを理解すると、遺伝子のここをブロックすれば、がん細胞の増殖を抑えられる、といった仕組みが分かってきます。こうした知識が新しい治療法や薬の開発につながるのです」とDNA(遺伝子の実体)によるがん研究の意義を語る。

シャーレの中の研究が新製品開発や地域振興に。

漢方薬として利用されてきた「ハナビラタケ」の有効成分解明を進めていた木山教授は、遺伝子を網羅的に調べることが役立つと考えた。研究を進めた結果、2018年、世界初の全ゲノム(全遺伝子情報)の解読に成功。さらに「ハナビラタケ」に女性ホルモンであるエストロゲンと同様の成分が存在することを発見した。しかも、エストロゲンは動脈硬化を抑える一方がん細胞を活性化させるのに対して、新発見の物質は、そうした副作用がないことが確認されている。「こうした化学物質の評価・検定にもがんの研究が応用されています」と木山教授。がん細胞をシャーレで培養し、化学物質を加え、変化するがん細胞を観察することで、その物質の活性や有効性を知ることができる。木山教授は、この方法で、イソフラボンやショウガの抽出物、茶、そして大豆の発酵物など、様々な物質の有効性を研究している。「福岡県の八女は、お茶の名産地です。お茶の有効成分を特定できれば、お茶に新たな価値を生むことができます。また、大豆の抽出物の有効性が確認されたことにより、新しい化粧品の開発につながりました」。地道な基礎研究は、新しい価値生み、産業を変え、地域に大きく貢献しているのだ。

社会で生き残るためのチカラを養う「研究のススメ」。

「大学に入学したら、研究を経験してほしい」と、木山教授は、学生たちに語りかける。「研究とは何か。それは新しいことを見つけること、新しい何かを考えることです。研究が必要なのは、研究者だけではありません。社会で活躍する全ての人にとって必須のノウハウなのです。日々変わり続ける現代では、学校で学ぶ知識や技術は、すぐに古びてしまいます。社会で必要とされるのは、新しいアイデア、新しい価値を生み出せる人間です。新しい価値を創り出すチカラを身につけるのが、大学で行う研究なのです」と研究の持つ重要性を語る。「これから大学を選ぶ皆さんは、就職率や資格など、いろいろな基準で大学選びをすると思います。それらも大切ですが、大学がどんな研究を行っているか、研究の経験がどれだけ役に立つか、という視点もぜひ持って後悔しない大学選びをしてください。私たちも研究にチャレンジする学生を全力でサポートします」。研究に打ち込んできた木山教授からの熱いメッセージだ。

Back