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AIを鍛える。

カメラやセンサーの情報をもとに自ら成長するAIで自動運転行動の向上を目指す。

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理工学部 情報科学科 米元 聡 教授 Yonemoto Satoshi
自ら学び賢くなるこれからのAIの可能性。

AI(人工知能)が身近になってきた。AIを活用した自動車の自動運転技術はめざましい発展を遂げている。人間では、到底処理できないビッグデータの解析もAIが可能にする。これからもAIは進化を続け、その能力を増していくに違いない。では、AIは、どうやって"賢く"なっていくのだろうか。米元教授は「知覚情報をもとに行動を自動獲得する技術」でAIを進化させようとしている。コンピュータに学習させるために、米元教授が取り入れているのは、「深層強化学習」という方法だ。深層強化学習とは、AIが自ら学習データを取得し、試行錯誤しながら、最適解を獲得する方法だ。米元教授は、AIがデータを獲得する手段として「コンピュータビジョン」に注目してきた。コンピュータビジョンとは、静止画または動画のデータをもとに、コンピュータが人間の目に相当する機能を獲得できるようにすること、「コンピュータの目」を実現することだ。画像を知覚情報として取得し、学習を重ねることで、AIは"賢さ"を増していくのだ。

カメラやセンサーの情報から運転技術を向上させるAI。

米元教授が、自動運転行動シミュレータの研究に取り組んだきっかけは、「スーパーマリオを解くAI」だった。人間がコントローラーを使ってゴールするように、AIにゲームの画面を見せてゴールするにはどう学習すればよいか、その仕組みを探った。その結果、AIは、視覚からの情報をもとに見事ゴールに成功。この研究を経て、現在はシミュレータ上で、深層強化学習による自動運転の実現を目指している。ただ、米元教授が目指すのは、自動運転技術の確立ではない。カメラやセンサーで得た視覚情報をもとに、AIだけで、どこまで学習し、行動できるかという点である。学習を重ねることによって、最初は、うまく走行できないAIも、フロントカメラの画像だけをもとに、車線を変更したり、アクセルとブレーキを使い分けたりと、次第に運転が上達していくという。「この研究の応用は多岐にわたります。カメラを通した実世界の情報をAIが学習することが汎用的にできれば、様々な技術の自動化が可能になるのではないかと考えています。自動運転だけでも、自動車だけでなく、飛行機や船にも展開できます。さらに、工場や配送センターはもちろん、野菜の画像情報を学習すれば、農業分野でも活用できるかもしれません。アイデア次第で、たくさんの価値が生まれます」と米元教授はAIが拡げる未来を語る。

高度な研究をするためにも高校の数学を大切に。

「もともと研究者になろうなんて思ったこともありませんでした」と米元教授は語る。小学生の頃から興味があったのはプログラム。ゲームを楽しむだけでなく、当時人気の携帯型コンピュータで簡単なプログラムを書いたりした。大学も、自然と情報工学科を選んだが、研究室選びの時出会ったのが「画像処理」というテーマ。研究するのが面白くて、大学院でもっと学びたいと思った。大学院に行っても、もっと学びたいと思い、「気がつくと研究者になっていた」と米元教授は笑う。「私の研究室では、AIの教育に力を入れています。3年生で脳機能をコンピュータ上で表現するために使われるニューラルネットワークを学び、4年生になると応用までできるようになります。コンピュータグラフィックスや画像処理など、様々なことを学びますが、基礎となるのは、高校での数学の知識です。得意不得意はあると思いますが、高校在学中に、できるだけしっかりと学べば、きっと大学でも役立ちます」と励ましのメッセージをおくってくれた。

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