九州産業大学シニア・アート・アカデミア

平成20年度後半

バスハイク(2009.01.10)

2009年最初のシニア・アート・アカデミアは、講師陣より「受講生の皆さんに、実際を作品を観てもらいたい!」という要望をうけ、アトリエを飛び出し美術館見学に行ってきました。
今回の行き先は、下関市立美術館と出光美術館(門司港レトロ地区)です。

雪が舞い散る寒い日の実施となりましたが、下関市立美術館は狩野派、出光美術館は尾形乾山・光琳と、どちらの美術館も講座で勉強した人物に係わる展覧会という事もあり、参加した受講生の皆さんの表情は真剣そのもの。
写真で見ていた作品が実際に目の前に登場し、掛け軸や屏風などはその大きさに圧倒されつつも、一緒に参加した講師陣に技法や作家、制作された時代などを積極的に質問している姿を見る事が出来ました。
見学を終えた受講生からは「良い刺激をもらいました」という言葉も聞かれ、1日という短い時間ではありましたが、各自今後の制作のための研究等が出来たようです。

第9回目 制作9(2009.01.24)

平成20年度シニアも今日で9回目をむかえました。
作品も細部の描き込みに入り、受講生も一段と真剣な表情で制作を行っていました。
その集中力は、講師がお昼休憩を告げるのを思わずためらってしまうほどで、手に何本もの筆を持って制作する姿や、一色を選ぶのにもいろんな角度から自分の絵を眺め慎重に選んでいる姿を、アトリエのあちらこちらで見る事が出来ました。
教えている講師陣も重要な部分に入ったという事で、絵の具や膠の量、筆の使い方などその指導に力が入っている様子です。
こうした講師陣の熱心な指導により、なかなか思うように進まなかった受講生から「前より上手くなりましたよ」「よくなってきました!」という声も聞こえてきました。
受講生の絵は一歩一歩確実に完成に向かっています。

第10回目 制作10(2009.01.31)

先週から細部の描き込みが本格化し、受講生は講座開始直後から黙々と自分の絵に向かっています。そのため、にぎやかだったアトリエはしーんと静まりかえり、筆や絵皿の音だけが聞こえてきます。

1月になり講座も後半に突入すると、筆を置いてじっと自分の作品を見つめる姿を多く見られるようになりました。
『どの絵の具を使用して、どんな描き方をしたら自分が思い描く絵になるのか?』という事を全身全霊が考え、次の一歩を導き出しているようです。
また、日本画特有の“塗り重ねる”という事がなかなか理解出来ず苦労していた受講生も、今では自分で配色を考え新たに絵の具を購入したり、“水滴”などの難しい表現にも果敢に挑戦しています。

第11回目 制作11(2009.02.07)

平成20年度九州産業大学シニア・アート・アカデミアも11回目を迎え、ついに残り2回となりました。
受講生の皆さんは、完成に向けて今日も真剣な表情で制作に取り組んでいます。

さて、絵が完成に近づく一方で新たなハードルを受講生がでてきているようです。
それは、「次に進む事のこわさ」です。
ある程度、自分のイメージ通りの絵が出来てくると、現在の良い状態を壊したくない!という思いが出てきます。そのため、「こうしたいな…」と心のどこかで思っていても、なかなか次の一歩に進めなくなってしまいます。
そんな時は講師が話しかけ、じっくり絵のイメージを話し合います。
最初に思い描いていた絵はどんなイメージなのか、今の絵を他の人が見たらどんな風に見えるのか、次にどんな描き方をしたら考えているイメージに近づくのか、など更に良くなるためのポイントをアドバイスしていきます。
どこを完成とするかとても難しい問題ですが、講師のアドバイスのもと、最初の描いた下図をもう一度確認したり、いろいろな作家の画集を見たりしながら、より自分の思いを表現出来るよう、受講生はキャンバスに向かっています。

制作と並行して行われている修了作品展の準備は、キャプションと展示会場の受付についての確認作業を行いました。
キャプションは来館者に、作品タイトルや作家名・解説など絵の基本情報を伝える重要なものです。受講生は、誤字脱字はないか?解説文は伝わりやすい文章になっているか?などの校正を行いました。
展示会場の受付は、展覧会の運営に係わってきます。
いつお客様が来館されても対応出来るように、また来館者の方が気持ちよく作品展を楽しめるように、受講生全員で協力して1日2人体制のローテーションを組んでいきました。

補講(2009.02.14)

本日シニア・アート・アカデミアは補講です。
実は、前回の11回目で制作工程は終了予定だったのですが、受講生の皆さんから「もう少し絵を描き込みたい!」という要望をうけ、急きょ本日補講が行う事になりました。

その声の通り、本日は講座開始直後から講師を呼ぶ声が教室を飛び交います。
髪の毛の一本一本から畳の目、めしべやおしべ細い線など、ちょっとした筆使いや絵の具の選択で絵の印象が変わってしまうため、気になるポイントや疑問が出てきたらすぐに講師に確認をする受講生の姿が見られました。
また作品の仕上げとして、『砂子』や『ぼかし』といった新たな技法にチャレンジにする方や、少し描いては遠くから絵の全体を確認、そしてまた描き込むという作業を繰り返している姿も見る事が出来ました。
最後の制作という事で受講生の表情は真剣そのものですが、完成が見えてきたせいか、今日は笑顔もたくさん見る事ができました。
少し前までは、難しい細部の表現になると不安げな表情も見せていた受講生ですが、今日は講師の言葉に「わかりました。やってみます!」といつも以上に気合いが入っている様子。自分が表現したい絵に確実に近づいているようです。

補講の終了時間が迫ってきた頃、ほぼ全員の絵が完成!
「まだ、ぜんぜんダメだけど…」と言いながらも、完成した絵を嬉しそうに眺めている受講生の姿がとても印象的でした。
そして、そんな受講生の姿を見つめる講師陣はホっとした表情を浮かべていました。

第12回目 内覧会&展覧会準備(2009.02.21)

昨年9月から始まった平成20年度シニア・アート・アカデミアも最終日となりました。最終日の工程はサイン入れと額装です。

まずはサイン入れ。
昨年の9月から約半年かけて描いてきた作品に、最後自分の名前を入れます。
この作業をもって作品が完成となるだけあって、受講生の目も真剣です。
サイン入れが失敗してしまうと、半年かけて描いてきた作品が全て台無しになってしまいます。そのため、初めて体験する受講生も2年目の受講生も、何度も別の紙に練習を行っていました。そして、一番細い筆を持つと全神経を筆の先に集中させて自分の作品にサイン入れ。
「最後の最後で一番緊張した!」という言葉の通り、作業が終わった受講生は少し疲れた表情。しかし、完成した作品を講師に見せるその表情には疲れは無く、笑顔いっぱいでした。

サインが完全に乾いたところで、いよいよ最終工程の額装です。
もちろん受講生にとって額装は初めての経験。
煌びやかな金縁・銀縁の額を目の前に、思わず出てきた受講生の「おお?」という歓声で始まった額装は、講師のサポートのもと作品と額にキズが付かないように、慎重に作業が進められました。

そして全ての作業が終了後、内覧会と講評会がおこなれました。
まず講師陣による受講生1人1人のこれまでの様子や作品について話からスタート。実は進行状況が心配だった!など講師陣からの裏話も飛び出し、受講生も思わず苦笑い。その後、受講生が自分の作品に込めた思いを語ってもらいました。挫折しそうになった話や途中で内容を変更した話など反省点も出てきましたが、それ以上に工夫したところや上手く出来たところなどを熱く話してくれました。
最後全員で記念写真!
そこには、完成した作品を抱え誇らしげな表情の受講生の姿が写っていました。

展覧会の様子(2009.2.23〜3.1)

平成19年度九州産業大学シニア・アート・アカデミアの修了作品展が10日〜16日まで、福岡天神 新天町 ギャラリー「風」で実施されました。
作品展では6月から油彩画・日本画・版画の3コースに分かれて制作した受講生23名の作品を発表しました。

この展覧会は作品の搬入展示から会場の作品解説ボランティア、作品搬出にも受講生全員で実施しました。

搬入の際、作品を展示する、キャプションを付けるという作業を普段見る事がない受講生は、「美術館の展示は本当に大変!」と展示作業初体験の感想を話していました。

展示期間中は、年末の忙しい時期にもかかわらず大勢の方にご来場いただき、受講生も講師も嬉しい一週間となりました。美術館スタッフが会場を訪れると、たくさんの名前が記入された芳名帳を持って「今日もたくさん来られましたよ」と笑顔で報告してくれる受講生の顔が印象的でした。

平成19年度のシニアは来年1月の美術館見学を残すのみとなりましたが、ぜひ家でも制作を続けて下さい、という講師の言葉で展覧会は無事終了しました。

九州産業大学シニア・アート・アカデミア