「共感」から始まるものづくりを社会に広げたい
清水 稔 教授
芸術学部 生活環境デザイン学科

 単にモノを作るだけでなく、使う人の「感情」や「体験(UX)」をどうデザインするのか。「共感」と「体験価値」を核に、社会課題を解決するプロダクトデザインの最前線について話を伺いました。

清水教授のこれまで

地元で見たソニー製品の
美しさが夢の原点

 中学時代、地元にソニー製品を扱う店舗があり、店主が「ソニーのデザインのすごさ」を語ってくれたんです。あの頃からソニーへの憧れがあったのだと思います。
 美大に進学し、その後、通信企業のデザイン部門に就職。iモード1号機などのデザインを担当し、多くのヒット商品を生み出すデザインができました。また、売れることに特化したデザイン開発に疑問を抱き始めるようにもなりました。
 そこで、かねてから憧れていたソニーへ転職。ソニーでは、機能美について学ぶことができ、デザイナーとして躍進できたと思います。
 ソニー退職の5年ほど前に、希望してスタートアップや新規事業に出資する部署に異動しました。そこで起業家の思いや社会貢献を目的としたビジネスに触れ、大量生産の利益追求とは異なる「人に届くデザイン」の大切さに気づき、現在の活動の基盤となっています。退職後は純粋にデザインと向き合いたいとの思いで教員を志望しました。

docomoの携帯端末デザイン
SONYハンディカムや
VAIO®のデザイン・マネージメント
数々のグッドデザイン賞を受賞

清水教授のプロジェクトについて

“モノをつくる”のではなく
“人の体験を設計する”視点

 私の研究では、主に「新しい体験価値」や「UX(ユーザー体験)」をどのように生み出すのかをテーマにしています。そのため、研究対象は特別な未来技術だけでなく、私たちの日常生活のさまざまな場面と深く関わっているのが特徴です。例えば、毎日使う家電製品や生活雑貨で「なんだか使いやすい」「触れたくなる」「使うこと自体が楽しい」と感じるもの、それは単に機能が優れているだけではなく、“使ったときにどのような気持ちになるか”までデザインされているから。そうした「人の感情」や「体験」を含めた「UX」の重要性を感じ、それをどのように創出するかを考えるのが私の研究テーマです。
 これからのプロダクトデザインは「これまでにない価値」を生み出すことが求められる時代へと変化しています。そこで、学生たちにまずデザインするにあたって取り組んでもらっていることは、体験価値を物語にすること。いきなり形やアイデアを考えるのではなく、その製品を誰が使うか、どのような暮らしの中で使われるのか、使った人はどんな感情を抱くのかといった背景を物語として書いてもらうのです。学生の柔軟な発想が生きた物語はいずれもおもしろく、そこから本当に求められるデザイン・新しい価値が生まれると信じています。

学生との卒業研究から生まれた新しい「お香」の煙りのかたちに着目したディフューザー
日常生活にそっと寄り添う「ふわっとしたやさしさ」を表現したプロダクト

今後の活動・目標について

「共感」を生み出す力を
育てていきたい

 福岡のプラスチック成型メーカーとの取り組みや、廃棄される太陽光パネルのガラス素材に着目した再利用・リサイクルを促すプロジェクトなど、学生とともに数多くのプロジェクトに取り組んでいます。これからの時代は、単に知識や技術を学んだデザイナーではなく、社会課題に対して新しい価値を提案できる人材が求められます。だからこそ、デザイン教育を通して学生自身が社会や人の感情に向き合い、「共感」から新しい体験価値を発想できる力を育てることを重要な目的としているのです。
 こうした考えをもとにゼミでは、スケッチやCG表現、3Dプリンティング、映像制作、プレゼンテーションなど実践的な制作活動を行っています。また、自動車企業との受託研究など、企業との共同プロジェクトを通して社会とつながる実践的なデザイン教育・研究に取り組んでいます。「社会とつながるデザイン」が学べるのも大きな魅力になっているでしょう。学生たちは既成概念に捉われることなく素の状態でアイデアを出すので、我々が思いつかないような豊かな発想が生まれます。表現のテクニックがなくても、「自分のアイデアを形にしたい」という強い思いがあれば自然とスキルは伸びていくもの。自分が考えたことが形になる喜びを一度体験したら、授業の数十倍効果があると思っています。そんな機会を可能な限り増やしていきたいですね。

PICK UP !
学生の才能を社会へ発信!
『インテリアライフスタイル2026』に出展
2026年6月10日(水)~12日(金)に東京ビッグサイトで開催された、国内外の最新ライフスタイルデザインが集う展示会「インテリアライフスタイル2026」にゼミ生が作品を出展。会期中は学生自ら作品のコンセプトや制作背景を紹介し、バイヤーやメーカー関係者から高い評価と商品化への期待が寄せられました。
企業との受託研究で
未来のモビリティーUXを可視化
スズキ株式会社との受託研究を通して、2040年の未来社会におけるモビリティーUXを研究しています。テクノロジーの進化だけでなく、人々の価値観やライフスタイル、社会との関わり方の変化を捉え、これからの「移動」に求められる新たな体験価値を考察します。「移動するためのモノ」から「人の体験を豊かにするモビリティー」へ。未来の暮らしとモビリティーの新しい関係をデザインすることで、これからのモビリティーの可能性を探ります。
  • Q.趣味はなんですか?
    旅行・農作業・料理
  • Q.好きな食べ物は?
    トマト・梨・柿
  • Q.今、興味・関心があることは?
    海外移住。ヨーロッパで仕事をしながら生活したい
  • Q. 座右の銘を教えてください
    雨垂れ石を穿つ
  • Q.「九産大生」の印象は?
    原石!