(所属:国際文化学部 日本文化学科)
教育課程主任として、未来の教育・社会を担う学生たちを育てる松原教授。学校教育を取り巻く環境に疑問を持ち、教育の専門家を志したという教授がライフワークとする研究とその先にある目標とは何か。詳しくお話を伺いました。
松原教授のこれまで
「教育の本質を追い求めたい」
教育実習後に方向転換し大学院へ
私が中学生の頃は、先生がまだ手書きで試験問題を作っていたんです。とても丁寧に作ってくださっていて、出される問題には学習意欲を高める工夫がなされていました。教科によって先生の個性が表れていて、とてもバリエーション豊か。「自分も先生になって問題を作ってみたい」と感じたのが、“教育”に興味を持ったきっかけでした。専門の教科をひとつ選ぶのではなく、さまざまな教科を教えたいと思ったこと、また昔から親戚や近所の子どもたちに好かれるタイプだったことから、小学校教員を目指すようになりました。
しかし、大学に入って教育実習に行った際、子どもたちから好かれたいという思いが先行し、きちんと叱ることができない自分に気づいて…。指導してくださっていた先生から「それでは好感度を気にするタレントと同じ。子どもたちの将来を考え、ダメなときはダメだとしっかりと伝える。それが教育なんじゃない?」と言われ、自分の教育観の甘さを痛感しました。また、過度の学校教育バッシングや現場を無視した教育改革などの風潮にも疑問を抱き、大学院に進学して研究者を志すことに。仲間のほとんどが現場の先生になっていく中で、一人ぐらいは“教育の本質”を考える仕事に就く人間がいても良いのかな、と感じたのも理由です。
その頃、時代や世間に迎合することなく反時代的考察を徹底し、人間における自然や身体的なものを重視する「生の哲学」を説いたドイツの哲学者・思想家ニーチェに共鳴。そんなニーチェ思想の教育学的意義を解明するための基礎研究として、大学院時代から今に至るまでずっと「教育学におけるニーチェ受容史の解明」に取り組んでいます。
ニーチェと教育学
“教育学のこれから”のために
ニーチェの思想と向き合い30余年
1890年代ですから、もう100年以上も昔のことですが、ドイツでも日本でも“ニーチェブーム”と呼べるような現象が起こりました。ニーチェの「生の哲学」というのはもともと人間の内的自然に対する欺瞞的態度や近代合理主義へのアンチテーゼだったはずなんですが、それを青少年が都合よく解釈し、「だったら夜な夜な酒を飲んで遊び歩こう!」なんてことも。すると、教師たちが「ニーチェは危険だ。青少年をニーチェから守らなければ!」と言い出したり、その青少年が教育家になって「いや、ニーチェの思想にこそ新しい教育のヒントが隠されている」と言い出すなど、対立構図のようなものができ、ニーチェが教育学の中で議論されるようになりました。
教育者でも教育学者でもないニーチェの教育学的意義とは何か。時代や世間に対して批判的姿勢を貫いたニーチェとともに人間のありようや教育の本質を根本から問い直すことで、人間が人間らしく生きることの大切さを基礎に据えた「教育」の形が見えてくるのではないか。それが、私の研究の目指すべき最終地点です。
例えば、学校教育の現場では電子黒板、タブレット、デジタル教科書などのICTや生成AIの流入が進んでいますが、新しいものを取り入れるだけでなく、板書、手書き、紙の本の教育的意義も忘れないようにすること。この世に生かされている存在でありながら、まるでスマホの画面を操作するかのように全てを自分が選択・決定できると思い、タイパ(タイムパフォーマンスの略)重視になったり、思い通りにならないことに対して不平不満を抱いてしまう自分を内省すること。つまり、社会の進む方向に批判的な視線を投げかけ、教育のあり方や人間の生について思索を積み重ねる。それが“人間の生”の再評価や復権につながっていくと考えています。
今後の活動・目標について
教職課程のブランド力を向上させ
教え子の教え子が入学する大学へ
現在、私は教職課程担当教員として全学の学生を指導しています。九産大に来て20年以上が経ちましたが、多くの卒業生が教育の現場や社会で活躍していると聞くと本当にうれしくなります。私は授業導入時など、まずは一人の人間として親しみを持ってくれたらという思いで、趣味の家庭菜園や日常生活のことを学生の前で話します。「教育」を専門とする研究者、教員免許状取得者としてのプライドもあるので、毎回授業は全力投球。学生たちと近い距離で接してきたことや自分自身の生き方を見せて信頼関係を築いてきたことが良かったのかもしれません。そのやり方を真似してくれている卒業生もいるようで、最近ではその卒業生の教え子が「先生に憧れて入学しました」と言い、九産大の教職課程で教員を目指す、といったケースも。授業はもちろん、教職課程の卒業生と在校生をつなぐ同窓会組織「教職ネットワーク」の活動にも力を入れて、九産大教職課程のブランド力をもっともっと向上させていければ…と思っています。
松原先生にとって教育とは
成長するのは子ども自身
一人ひとりの可能性を信じて見守る
私の趣味である家庭菜園と教育には、どこか通じるところがあると感じています。日当たりや土壌といった環境を整え、水や肥料を与え、必要に応じて悪い部分を剪定する。このような世話を通して私たちは、おいしい野菜や果物の収穫を期待するわけですが、育てている植物がその後どのように育ち、最終的にどのような実りをもたらすかは、その植物自身に委ねるほかありません。
教育においても同様。大人ができる働きかけには限界があり、子どもの成長そのものを直接的にコントロールすることはできません。だからこそ、過度に介入するのではなく、一人ひとりが持つ成長の可能性を信じて見守る姿勢が重要だと考えています。この世に生かされていることに感謝の念を抱き、外的自然はもちろん自分自身の内なる自然も大切にできるような人を育てていきたいですね。
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- Q.趣味はなんですか?
- 家庭菜園(ニラ、シソ、ミョウガなど)
果樹栽培(レモン、晩白柚、ブルーベリーなど)
晩白柚は自作の「おいしい食べ方」冊子を添えてプレゼントしたり、
飲みに出かける際は“Myレモン”を持参することも。
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- Q.好きな食べ物は?
- 豚ホルモン焼肉、うどん入りのお好み焼き、ごまさば
その他、町中華や居酒屋メニュー全般 -
- Q.座右の銘を教えてください
- 「人間は動物と超人とのあいだに張り渡された一本の綱である」(ニーチェ)
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- Q.「九産大生」の印象は?
- 個性的でパンチの効いた「グリーンレモン」
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子どもたちが
飢えない社会をつくる -
九州の農業を
ロボットの力で支える -
海洋プラスチックについて考える
”きっかけ”を与えたい -
写真を通じて
人と場所のつながりを探求する -
食の安全・安心を追究し、
食品ロスを減らしていきたい -
新しい冷媒技術で
未来の人類を救いたい -
快適で健康的な
居住環境をデザインする -
スポーツを続ける
「明確な効果」を広めたい -
個人が、楽しみながら
「水害対策」を行う時代に -
ラーメン店のおいしさを
お土産品でも再現したい -
日本の観光を
もっとおもしろく変えていく -
暮らしも人間性も豊かになる
「言語学」の魅力 -
「工作」と「遊び」の力で
地域の課題を解決したい -
新興国の経済研究で
日本の経済を輝かせる -
九州から世界への挑戦を
研究を通して応援したい -
ICTを活用し
地域の公共交通の利便性を
高めたい -
子どもたちの生きる力を育み
世界から貧困をなくしたい -
イラストレーションの力で
人と人の心の交流をつくりたい -
建築の可能性を追求し
100年後の文化として残したい -
離島航路の調査・研究で
離島の人々の暮らしを支えたい -
「人間の“生”」を大切にできる
教育者、社会人を育成したい -
“内なる感覚”に気づく心理療法「フォーカシング」
心を整え、よりよい社会へ