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デジタル全盛の時代に、写実絵画にこだわる理由

芸術学部 芸術表現学科
学びのキーワード
  • 写実
  • 芸術
  • 油彩・油絵
  • 画家
  • 表現
  • リアリティ
  • 絵画・絵

講義ポイント①

模倣することそのものに価値があった

現代では写実絵画は「表現」と考えられていますが、それが誕生した頃はイリュージョンだと考えられていました。人々は実物そっくりの絵に幻惑され、画家にはそのような絵を描きたいという欲求がありました。写実する、つまり目に見えるものを模倣することに魅力があったのです。また、記録するという機能もありました。貴族は自分の肖像画を画家に描かせることで、自らの存在を明らかにしました。

講義ポイント②

リアルといっても、画家によってその中身は違う

写実への欲求を推し進めたのは、油彩の材料と技法です。油彩には光沢と質感があり、重ね混ぜ合わせることでグラデーションを表現することができます。陰影と立体感、空気感を表現するのに適した画材でした。画家たちは、この道具を使うことでリアルに描くことを競い始めます。駆け出しの画家は、巨匠の絵を真似(まね)してその技法の秘密を学ぼうとしますが、決して同じ絵にはならず、試行錯誤するなかで自分なりの表現と技法を獲得するようになります。
リアルといっても一通りではなく、画家によって何を重視するかは異なります。ボッティチェリの絵は平面的ですが、線の美しさに、リアリティがあります。また、色彩にリアリティを見出す画家もいます。画家によって、リアルを実現するための試行錯誤の中身、表現との格闘の仕方は異なっているのです。

講義ポイント③

デジタル時代の現代、写実絵画の何が残るのか

時代は変わり、写実絵画は、カメラの開発で、「記録する」という機能は衰えました。抽象画の誕生で、表現は写実にとらわれず自由になっています。また、デジタル技術の発達で映像表現も高度になっています。
このような中で、写実絵画にこだわる理由とはなんでしょう? それは、手仕事としてリアルな表現を獲得するための苦しみや試行錯誤、例えるなら「リアルというブラックボックス」に近づくための過程に意味があるのです。いくらテクノロジーが進んでも、芸術が存在する限りこの経験は残っていくでしょう。

芸術学部 芸術表現学科

渡抜 亮 先生
専門:芸術学、美術学