催眠療法体験記(1) 自己催眠
森川研究室ホームページ
 2003年7月19日(土)夜20:00。吉祥寺のルームは、団地の中にあっ た。玄関を入って正面の部屋がすぐにセラピールームで、クライエント(この場合私)が横たわる白いベッド、観葉植物、アジアチックな置き物、そしてアロマの香りがする。セラピストは清楚な女性。これが開業でお金を取る人のルームなのか。大学の一般向けカウンセリングルームはどこも、「心を広げる部屋には、余分なものを置くべきでない」の精神で、極めてシンプルな作りになっており、お茶も出さないものだが、リラックスや癒しの場というのが一般的になってきた昨今、周囲の雰囲気にな らって植物や軽いアロマぐらい検討してもいいのかもしれない、と思った。
 
 私の選んだ「自己催眠」のコース(60分5000円)は、リラックスのための催眠を主眼としていた。クライエントが自分で自分に暗示をかけてリラックスする方法を会得するというものだ。セラピストが言うには、このコースは一定のメニュー(セラピストが入れる教示の内容や時間配分)が決まっていて、クライエントに応じて替えたりはしないという。早速始まった。





1 催眠についての説明
 
「催眠は一般に特別なものと思われていますけど、そうではありません。私達が朝起きて窓を開けて空気がすがすがしいなと思う時。何かに気持ち良く没頭している時。夜に外を歩いてしんとして気持ち良いなと思う時。そういう時に私達の脳は、催眠の状態に入っています。私達は一日何度も催眠の状態に入っていて、リフレッシュし、潜在意識と繋がってエネルギーを得ることができるのです。」クワイエットな雰囲気の中、20分ぐらいレクチャーがあった。話ぶりは、催眠への構えを自然なものにしようとする声のトーンで、話の内容も、現象に忠実な感じがした。「これから行うことの中で、はっきりした感じがでなくても良いのです。なんとなく、でいいのです」




2 催眠誘導

 いよいよ白いベッドに横たわり、催眠誘導が始まる。「足の裏のリラックスが、かかとに伝わります…」といった流れで、頭頂まで全身をリラックスさせていく、漸進的リラックス法による誘導。これなら後倒法などに比べて、気持ちがいいし、クライエントが自分で進めていける感じがする。呼吸によるリラックスでは、「吸う息と共に、自分にとって良いもの、必要なものがからだの中に入ってきます。要らないもの、ストレスや緊張は、息とともにからだの外に出て行きます」といった教示になるほどと思う。フォーカシングでも使えそうだ。
 リラックスすると体が重く感じる。





3 催眠下でのイメージ

 「今から潜在意識への階段を降りていきます。扉をあけたら自分にとても良い場所とつながっています。とてもリラックスできる、エネルギーをもらえる場所です。10…。9…一歩降りるごとに、だんだん近付いていきます。」という感じの教示に従って、階段を降りていった。
 自分はあまりリアルにイメージできるほうではないが、「ぼんやりとでいいのです」ということだったので、イメージをはっきりさせようと努力をせず体験にまかせた。階段を降りていき、そして重い扉を開けた。自分にとってのその場所は、緑の多い場所で、高々とヤシの木が生え、南国的というか、ハワイのような印象だった。
「あなたにとって大事な人がそこに居ます。」とセラピストは言った。私は、ありがとうと言いたい人に、言葉を選びながら礼を言った。伝わった気がした。
 そして教示に従って階段を戻ってきた。





4 振り返り

 出してもらったお茶を飲みながら、私にとっては気持ちの良い時間だったことを伝えた。
 私は、やがて開設される九州産業大学の臨床心理センター(2004年4月開設) に、催眠とはいかないまでも、何かこのような癒し感覚のメニューがあったら面白いだろうなと思った。ここのように、一定のメニューが決まっていて、心地よく体験できる内容のみを選んで組み立てるのだ。カウンセリングルームと言うと心の問題がある人がそれを解決するために来る、というような、病理モデル的イメージがあるが、この「自己催眠」のような内容であれば、ごく普通の人が、会社で疲れたなと思うときに「足ツボマッサージ感覚」で寄ってリフレッシュしようという、なんかそういう気楽な雰囲気になるのではないか、と思ったのだ。
 しかしセラピストは、「気に入ってくださって嬉しいです、でも、この自己催眠のコースはもう終わりにしているのです。今後御要望があれば、その都度やらせていただくことはできますけど。」と言った。なんでも、より深い催眠での「自己探究」を主眼とした、150分15000円コースの方が人気があるという。「時々、男性の方などで、自立訓練法などをやっていてこういう事に慣れていて、自己催眠を覚えたいからと言って通って来られた方はありましたけどね」。私は、「そうですか。私はこれで十分ですから、またこちらに来るときは、お願いします」と話して、ルームをあとにした。




5 感想

この過程については、当日はもっと正確に覚えていたので、ホテルに帰り、持っていたテープレコーダーに、自分で楽しく催眠教示を吹き込んだ。で、今後はこれを聞きながら自分で催眠できるぞ、と思って安心いたのだが…。テープレコーダーが壊れ ていて録音に失敗した。残念。テープに取ると安心してしまって細かいことを忘れてしまうんだよね‥。機会があったらまた行って今度こそ覚えたい。
 セラピストの先生お世話になりました。


☆ 催眠療法体験記2につづく
☆ 催眠療法体験記トップに戻る

フォーカシング
気まぐれ日記
学生ラボ
自己紹介・研究
LINK
TOP
授業・試験
何でも体験記