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アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年2-(2)



2日目 『内なる葛藤の中に生き生きとしたエネルギーを見出す』  #2 アクションブロック 

アンさんは「こころの宝さがし」という独特なワークを開発して来ている。
こころの宝さがしのワークショップは6日間かかり、フルに体験するとなると北米に行くしかない。
日本では1997年の来日時に1日紹介ワークショップが持たれたことがある。  
いよいよその「こころの宝さがし」最新バージョンの紹介だ。  

<行き詰ってしまっているような状況について、ここずっと興味を持ってやっています。一緒にやらせていただいているバーバラと、17年間このテーマを開発してきています。>  

1997年来日時点では、人生上の難しい局面を「崖っぷち/穴ぐら/沼地/山の頂」など、
7つの難しい地勢に例えて、心の葛藤に耳を傾けていくというワークだった。
福岡の筑紫フォーカシング研究会には、
このワークを活用して就職支援を行っている人もいることから、
「アンさんを呼んで心の宝さがしをもうちょっと教えてもらう」というのが、今回再招聘の大きな目的であったのだ。  

しかし、何と、それから10年経つとすっかりワークが様変わりしていた。
目的自体は同じなのだが、用語も手順もかなり違う。  

<人が難しい状況に居るときは、Larger Iであることが難しいですね。難しい状況のときには、そこに、典型的に出てくる感じがあって、特にペアで出てくることが多いです。  

その中の一つは、ディフェンダーです。2歳児ぐらいの反抗的で、言うことをきかなくて衝動的なキャラクターです。  もう一つの部分はコントローラーです。心配性で、ディフェンダーをコントロールしないといけないと感じています。>  

………。  
タームが横文字になっているぞ。  
しかも全然可愛くない…!!(泣)。  

若干ショックではあるが、進化し続ける臨床家というのはそういうものなのだろう。  

今回来日のワークと、2008年に出された論文とを併せて読み解くと、現在のこころの宝さがしでは3つのキャラ設定があるようだ。  

・ディフェンディング・パーシャル・セルフ(ディフェンダー) 防衛的な部分自己   
・コントローリング・パーシャル・セルフ(コントローラー) 支配的な部分自己   
・コンプロマイズド・パーシャル・セルフ 屈服的な部分自己           

これらのどれかあるいは複数が悪い意味で大きくなりすぎていて、Larger Iの状態でいられない状態が、人生の難しい局面、行き詰まり状態ということだろう。  
想像するに、6日間の「こころの宝さがし」ワークショップでは、おそらくこの3者の強弱によって、
例えば、  
・屈服的な部分自己が前景に出ている状態(鬱)  
・ディフェンダーが行動を起こし過ぎて暴走している状態(中毒)

みたいな様々な局面を、基本の教示をちょっと変えるだけで、
(レシピが同じでも材料を違えて別の料理をつくるように)取り扱っていくのだろう。  

今回のワークショップでは、  
何かやりたいと思うことをディフェンダーが差し止めていて、前に進めない状態(以前のワークで「沼地」と呼ばれていた困難)で、
ディフェンダーと、それに対抗する強いコントローラー、両者の言い分を聴いていくことになる。  

<アクションブロックに関して、自分自身の体験をお話しますと、ライターズブロック、何か書こうとするときになかなか筆が進まないということがあって、やっかいでした。  
少なくともそのときに私が使ったフォーカシングは効果がなかったんです。
そこで、自分の中にもしかしたら「書きたくない」という部分があるんじゃないかと考えたのです。  
フォーカシングパートナーに、“書きたくないという部分があるかもしれないから、それを感じてみたい。”と伝えました。
しばらくすると何か、胸のところにあるのを感じました。
硬いようなかんじで、からだが曲がっていくような、(略)姿勢を低くしたくなるような感じがありました。
撃たれそうになったらかがみますね。自分が誰かの標的、ターゲットになっているイメージで。  
ゆっくり共に居続けていると、自分の幼児期、特に父親と過ごすことがどんな感じだったのかということが急に浮かび上がってきました。  
自分が書くことを許そうとしなかったその部分は、父親から自分を守ろうとしていたんだと分かったんです。  
そのセッションの中で、その部分に対して、今まで守ろうとしてくれてありがとうと伝えました。  
そうすると何か、力が抜けたような、開放されたような感じがありました。
そのあと、100%ではないですがずいぶん書きやすくなりました。>  

<ある時、すばらしい体験をしたんです。
いまだにそうはいっても書くのが難しいのでもう少しフォーカシングをする必要がある、とパートナーに伝えて始めました。
書きたくないと思っている部分について感じてみました。  
今回は、もっと強い、良い感じ、例えていうならティーンエージャーという感じでした。
それが言うには「何かやらないといけないようなことをやりたくない」と。
私は「そりゃそうね」と言いました。
私は彼女の持っている強さをすごいなと思ったわけです。  

次の日、いつもと同じように自分を無理やりコンピューターに連れていくような朝になると思っていたのですが、
ところが実際は、自分の中のティーンエージャーが、「さ、書こうよ」と言ったんです。
そのあとは何冊も書いています。>  

<今のこの2つの例が、ディフェンダーの特徴を示していると思うんですが、ディフェンダーは何かから守ろうとする、もしくは支配されることに対して抵抗をします。>  

父親から自分を守って書くまいとしていた部分や、義務っぽいことならしたくないんだと言うティーンエイジャーみたいな部分が、ディフェンダーだというわけだ。  
このようにアンさん自身の例を話したあとで、ディフェンダーのワークに入っていった。

取り上げるテーマは以下のようなものであれば何でもよいという。
・やろうと思っているけどやっていない、何か行き詰まりを感じていること
・自分の、変わってほしいんだけど全然変わっていないところ。
・そのことをやってはいるけどすごく苦労する、もっとすっと楽にできたらなと思うようなこと。  






アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年 2−(3) に続く