3日目 『より深く理解し、実践に生かす ―身体の痛み、トラウマ、そしてもっと―』 前夜 <そうなのよね。 だから私は今までこんなに長いこと世界中でフォーカシングを教えていても、 身体の症状についてのフォーカシングを教えたことは一度も無かったの。 満足を感じられない人も出てくるでしょう。 だから、身体症状のフォーカシングをやってもらうのは、デモンストレーションにするわ。 そして、ペアでやるフォーカシングは、トラウマのことにするわ。> こうして、3日目のワークショップは始まっていった。 (以下、3日目は、私はスタッフとしての仕事をしていて、フォーカシング自体は体験していないので、ワークショップの内容やアンさんの言動を、かいつまんで記録させていただく。) 3日目 #1 セラピストがLarger Iであること (ブッダの大きな絵が2つ書いてある。) <Larger I より大きな自分といった考え方を援助する側としてどう使って行けるのかについてお話していこうと思います。 セラピストが自分の感じに対して、Larger Iでいることが望ましいんですね。 何も感じないという意味ではなくて、難しい感じを感じることもあるかもしれませんが、 Larger Iとしてそこと関係を持ってみているというところが大事です。 そうすることで、クライエントさんが安心して安全な気持ちで居るよう助けることができますし、 セラピストがクライエントに対してより自分を開いて待つことができるようになります。 じゃあクライエントさんがLarger Iで自分の気持ちとかかわれるようになるように、 セラピストはどういうことができるでしょうか。 1 最も大事なのは、セラピストが何を言う、何をするということではなくて、セラピストがLarger Iでいるということです。 2 次に大事なことは、言葉の使い方が2種類あるんですが、セラピストが伝え返しをする言葉で2つ大事なことがあります。 @ その一つは、あなたは何々に気付いてきているんですね。とか、何々に注意を向けているんですね、何々を感じているんですね、という言い方です。 クライエントさんが胸のあたりに重い感じがあります。といったら、あなたは胸のあたりに何か重い感じを感じているんですね。と伝え返します。 A 二番目の言葉の使い方としては、あなたの中の何かが、という言葉の使い方です。 この表現は、クライエントさんがある感情と一体化している、例えば私はすごく不安なんです、といったときにすごく役に立ちます。 あなたの中の何かが怒っているんですね、というふうに言い換えて伝えます。 私は、クライエントさんが言ったことをそのまま伝え返すのは大事と思っています。ほんのちょっと、あなたのなかの何かが、というところを変える。 クライエントさんが自分の中のそれと関係を持てるためにこういう言い方を使っています。 質問はしないほうです。質問が悪いわけではありませんが、 クライエントさんが自分の中と内なる関係を築こうとしているときには有効ではありません。 なぜかというと、クライエントさんが目をつぶって、自分に注意を向けているときに、質問をすると、 セラピストのほうを見ます。 セラピストとの関係に注意が移ってしまうからです。 3 提案をすること クライエントさんが自分のことを話してる時、身体に注意を向けてみましょうと言います。 身体に注意を向けるというのがうまくいく人とそうでない人がいるかもですが、 まずはそれをやってみます。 @そのことが今あなたのからだでどのように感じられるのか注意を向けてみましょう。 A何かしら内側で感じられているかんじがあると仮定して、その感じにあいさつをしてみましょう。 もしくは、“こんにちはと声をかけてみてもいいかもしれません” 。 私の好きな、ジェンドリン先生の言葉ですが、 クライエントさんにセラピストとして会っているときに 自分の気持ちというのはすぐ近くに置いておきたい。 セッションの中でセラピストの気持ちが必要になるときがあるかもしれないからです。 同時に、今まで自分がやってきたいろいろな理論や方法もすぐ近くに置いておく。 でも、クライエントと自分の間には何も置かない。 人と人とが直接かかわりあっていく。 練習は必要ですが、 ほとんどの注意をクライエントさんに向けながら自分の中の感じに注意を向けるというのは可能です。 例えば、前回のセッションが苦労するセッションだったとします。 すると自分の意識していないところですごく緊張していて、 また大変なセッションになるかもしれないなと思っています。 ちょっと自分に注意を向けて、確かに緊張しているところがあるなと気が付きます。 何かを特に変えようというのではなくて、そうなんだというふうに気付くこと自体が、 何かしらの変化をそこに起こしています。> 上記の講義の後、エクササイズは、4人組で行われた。 1人のフォーカサーに対して、正面の人がメインのリスナー、 他の2人がサイレントリスナーになる。 4人とも、Larger Iであることを心がけて1人につき5−6分のフォーカシングであった。 テーマとしては“ワークショップのいまこの時間にどんなふうに自分を感じているかな”とか、 “今自分はどんな感じだろう、今の自分の人生はどんな感じだろう”等を例示なさっていた。 アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年 3−(3)に続く |