3日目 『より深く理解し、実践に生かす ―身体の痛み、トラウマ、そしてもっと―』 #2前半 身体の痛み <Larger Iというのを午前中やってきましたが、これはいろんなところで役に立つものです。 その一つが、身体の痛みに対しても有効です。 フォーカシングは身体の痛みには効かないという人もいるんですが、何かを感じ取る態度は、身体の痛みにも有効だと考えます。 様々な身体の感覚ね、かゆみ、やけどにも使えるというふうに考えます。 実はフォーカシングを学び始めて数カ月のときに、シャワーのところにかかっていたタオル掛けが落ちたんですね。 熱いっ、この瞬間にフォーカシングしよう、と思ってやったんですが、注意を向けるとより熱くなりました。 それに注意を向けることでそれがもっと大きくなる、悪くなると思いました。 でも痛みに関するフォーカシングをすると、最初はそれがより強く感じられるということが、経験とともにわかってきました。 それが分かっているので、今は、強くなっても恐れるということはないんです。> そして、アンさんは、例の火傷の話をし始めた。 <その頃にはもう、フォーカシングの経験をずっとしてきていますので、痛みに対する恐れはそんなになく、痛みというふうにラベルをつけて呼ぶんじゃなくて、その感覚、それに注意を向けました。 あたかもその感覚を以前は感じたことがないように、新鮮なかんじで、描写してみたんですね。 もし自分の中のどこかの部分がそれを恐れていると、そこに留まって感じるのを難しくしてしまう。 けれども、恐れていない場合は、感覚になじんでいって(sink in)、 自分の意識がフルにその感覚を感じられているような状態になり、 そうしたときに、これは不思議な感覚なんですが、 その感覚とともにいることが何か、嬉しい感じになったんですね。 もしかしたらその感覚が私が居てくれることに対して喜んでいて、それが喜んでいるから私も嬉しくなったのかもしれません。> アンさんはこのように、身体症状へのフォーカシングが、 プレゼンスの極致を必要とするのだということを、印象づけながら話していかれた。 <たぶんそのフォーカシングをしていたのは20分ぐらいと思うんですが、次の日目が覚めたら全然痛くなかったんです。 他にも、私の学生さんは、家具を作るのが好きで、電動のこぎりで親指の上のところを間違って切っちゃったんですね。 病院で何時間か待っている間、この親指にプレゼンスでかかわってみようと決めたんです。 30分でその痛みは消えて、2時間以上経ってお医者さんに会えたんですが、 お医者さんは、「神経がやられたのかもね」と言いました。 それだけの大けがで痛みが止まるということをお医者さんは信じることができなかったんですね。 その学生さんは痛み止めを必要としませんでした。 からだが痛みを体験するときには、多くの場合、自分の中に恐れている部分を体験することが多いです。 痛みがもっとひどくなるんではないかと恐れている場合もありますし、 がんなんじゃないか等と痛みの意味について恐れていることもあります。 痛みへのフォーカシングのプロセスは、 1 痛みに対して恐れている部分がある場合は、まずその部分と一緒にいるフォーカシングをします。 2 そのあと、痛み自体に注意を向けて言って、変えようとするとか何かしようとするのではなく、その感覚はどんな感じなのかというのを描写していく。 注意を向けるとその感覚は一時的に大きくなることが多いので、心の準備をしておくとよいでしょう。 大事なところはそれと一緒に居て感じ続けて、描写して、それが必要としている時間を取ることです。 ときには、怪我をした部分があなたに対して何かをお願いするかもしれないですね。> アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年 3−(4)につづく |