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アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年3-(4)



3日目 『より深く理解し、実践に生かす ―身体の痛み、トラウマ、そしてもっと―』  #2中盤 身体の痛み

アンさんは、デモンストレーションを募り、「古くからの痛みでもいいですか」と応じた参加者の方がフォーカサーとなった。

<だいたい20分程度かなと予想しています。何かが起こらないといけないということはありませんから。何も起こらないデモンストレーションも、またそれで面白いと思いますので。
じゃあ少しゆっくり時間をとって、そこに居るかんじ、椅子に座っているかんじ。
それからからだの真ん中のあたりですね、喉から、胸やおなかのあたりにも注意を向けてみましょう。
今どんな感じがしているかな、座っていてどんなかんじかなーというふうに、感じてみましょう…>

フォーカサーの方がどんな体験をなさったのかについては、個人の体験なのでここに書くことはできないが、アンさんは以下のような応答をなさっていた。

<先ほどおっしゃっていた痛みについても、少しずつ、感じてみてもいいのかもしれません。>

<じゃあ、今から、その感じ、そこに注意を向けてみることを選んでみましょうね。そこが、どんなふうに感じているか、注意を向けてみましょう。
もちろん記憶の中で、過去においてどんなふうにそこが感じたのかっていう記憶もあるかと思いますので、それに対して、「ああそんなふうに感じたよね」というふうに伝えてあげてください>

<そうですよね。普段の生活では、支障が出ないように、痛みが無いようにしてるのは、よく分かります。
でも、このフォーカシング、今の時間では、その痛みがちゃんとあるっていうのを気が付いてほしいっていうことを知っているし、それに対して、そこに居ていいよ、っていうふうにしていく時間になったらなと思います>

<それが自分の中にまだちゃんとあるっていうのを見て欲しかったんですね>

<その中に、その感じが、大事に包まれているんですね>

<それを今、感じてらっしゃるんですね>

<今感じていることを十分に感じる時間をとってくださいね>

<あと3分で終わりにしようと思いますけど、もしかしたら、この感じが、あなたと一緒に前に進んでみたいと感じているかな、というのを、感じてみてもいいかもしれません>

<身体にもありがとうって伝えてあげてください>


この、アンさんの応答から見ても分かるように、非常にスムーズに、痛みの部分が大事にされていくセッションだったと言える。

<見ておられて分かられたと思いますが、私、リスナーとしてそんなにいろいろやったわけじゃないですよね。 でも、プロセスがいろんなことをもたらしてくれて、とてもいろんなことが起きたと思います。>


見ていた方のコメント。
「アンさん何もしていないと言われたと思うんですけど、やっぱり私からも何をされたかというのはあまりよく分からなくて。
その感覚に、注意を向けるとか、そういうことはやられましたけど、それだけで、あれだけのことが起こるのかちょっと分からなくて、もし、目に見える言葉以外の心がけとか…。」

アンさん
<フォーカサーのからだが知っていてそこから自然にプロセスが起こっていく、それを見せてくれたという意味で、いいデモだったと思います。
一つ何か申し上げるとすれば、この痛み、感覚についてのいろんな記憶がありますよね、そのことについてもこんにちはっていうふうに言ってみましょう、という教示をしたところがあったんですけども、そこは一つあるかもしれません。
そういうふうに申し上げたときに、フォーカサーの肩がすーっとリラックスして深呼吸されたように見えました。>

フォーカサーの方は、こういう意味のことをおっしゃっていた。
「私自身の感じとしては、アンさんが前にいらっしゃって、大きくアンさんが膨らんでいくのが分かって。
私自身もこう、膨らんでいくんですけど、アンさんにつられてよけい膨らんでいって、
その中で、感覚に注意を向けていると、何かをしようとか、そういうのを思わないで、ただ、包まれた中の感覚に目を向けていると、あとは勝手に行った。
そういう体験でした。」

神がかり的なアンさんに対し、質問は尽きず、
「フォーカサーを妨げないリスナーの在り方がとても難しいなあと思っていて、それをいともたやすくなさっているアンさんがすごいなあと思います。
それはちょっとマネができないなあ。」

「アンさんがそういうふうに有ること、少しでも私たちの日常にヒントをもらえるとしたらどういうことがあるかなと。」

すると、アンさんはこうおっしゃった。
<フォーカシングをたくさんやってほしい(笑)。ここに居る私は、39年半、ずっとフォーカシングをやってきた人間なんです。それだけやっているといろんな違いをもたらしてきたなあと思います。>

うーん、ごもっとも。

<もう一つだけ、身体的痛みについて申し上げておきますと、変化というのは、今この瞬間において可能だと考えています。
慢性的な痛みを抱えている方にとっては、何年も痛みが続いているので、過去の、痛みに関するいろいろな記憶も今、あるわけですよね。
今それがどんなふうに感じられますかと聞いたときに、今日の朝ものすごく痛かったんですとか、先週ひどかったんですいう答えが返ってくるかもしれません。

そういうふうに返ってきたら、
そうですか、今もそんな感じがしているのかどうかちょっと感じて確かめてみましょうか、と返します。

別のよく使う言い方としたら、その感じを、今まで全く感じたことがないようなつもりで、新しく新鮮にそれを感じてみるとどんな感じでしょうか。そういう聞き方をします。>




アン・ワイザー・コーネル来日ワークショップ福岡2011年 3-(5)に続く