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労働者御用達の宿 宿泊体験記 in 福井(2)



幸いなことに熟睡し全く風邪もひかず朝となる。
ホテルのように変な暖房で乾燥してて喉を痛めるということもなく、
こうして布団だけで暖を取るというのは、健康にいいのかもしれない。

朝8:00ともなると、労働者とスポーツマンの皆さんは全員、出発しておられる。

宿のおばちゃんに、「お風呂は無いですよね?」と尋ねると、
「あるよ、そこ、そこ」。
どう見てもおばちゃん家の一角。
ここが宿泊者の風呂だとは想像できない。

タオルは、「ある」、 歯ブラシは「切らしている」とのこと。
宿を移る口実もなくなり、(実はパッキングしていた)荷物を、部屋に置いたまま宿を出る。

大学で、平井氏にプレゼントされた歯ブラシで歯を磨き、
朝から夕方までフルに学会に参加、
前日の反省をもとに、20:00には食事を終え、
20:30に宿帰宅。

「タオルを貸してください」と頼むと、住み込みの従業員の人が、タオルを1枚出してくれる。
「あのう、もう1枚‥」と小声で言うと、やや怪訝な顔をされるが、もう1枚出してくれる。

脱衣場に入ると、やっぱ家庭の風呂だ。
なんせ、脱衣かごの中には、おばちゃんの
ズロース(ベージュ色)が1枚入っている(笑)。

そして怪訝な顔の意味はすぐに判明。
風呂場に、身体を洗うシャワシャワのタオルが5、6本掛かっている。
はは〜ん、これで洗えということか。

しかし男性宿泊客の皆様と兼用というのはね‥。

と、よく見れば、まんがの絵のついたタオル1枚。
孫のものに違いない。

‥‥‥。
すまん、孫(笑)。

かくして、奇麗に身体を洗い、緑色の湯(バスクリン)で暖まったのだった。

チャッカマンを借りて、無事にストーブも点灯。
21:30には宿は静まり返っている。
ふすま模様のドアの向こうに、薄い壁の向こうに、人がいる。
人が、静かな夜に入っていく気配がある。

北陸の夜。

畳の部屋に、一人起きていると、
今自分はこの部屋で何をするのがふさわしいのだろう、などと思う。

持ってきていた英語論文の冊子に手を伸ばす。
ホテルの完全密室だったら、漫然とテレビを見たかもしれない。

思うに人間は、「まったくの一人」では、自分の位置、ひいては自分そのものを確かめることができない生き物ではなかろうか。

結局、23:30まで英語を読んだ。
寒々しい共同トイレに行った。
すっかり、昭和の学者先生みたいな気分になった。

そして、ストーブを消して、寝た。


翌日、福盛氏に尋ねられた。
「いや〜たいへんだったねお疲れさま。次来たら泊まる?」
「微妙やね」
「微妙なん?!泊まるかもしれんの?」

労働者、「長期宿泊」歓迎の宿。
あのくらい人がいて、家庭のいいかげんさがある、 そしてその中で一人になれる。
ああいう宿なら、たとえ雪の中、2ヶ月や3ヶ月といった長期宿泊も、耐えられるだろう。

「じゃあさ、その宿、人に勧める?」
「意外とね、3日以上泊まる人なら、勧めるね。どう?」
「いやいやいや(笑)。」

私は、次また武生の町に用があったら、泊まるかもしれない。
だって、私は3泊目だから。

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以上、「労働者長期宿泊歓迎宿体験記」でした。

私が学会の廊下で、宿の話をし始めると、どういうわけか
「何かその話、元気になる」等と言われ、
1人また1人と人が寄ってきて、友達を連れてくる人や、
「もう一回聞かせて」というという人まで居て、
気がついたら15人ぐらいに囲まれながら何度か喋ったりしました。
残念だったのは、私の学会発表の時のギャラリーさんは、それよりはるかに少ない数だったということです(苦笑)。

いろいろありましたが、もう一度泊まってみたい宿です。
三ヶ月分の荷物が入る大きな押入れと、あったかいバスクリン。
池田屋さん、ありがとう。





労働者御用達の宿 宿泊体験記 in 福井(1)

労働者御用達の宿 宿泊体験記 in 福井(2)