「気まぐれ読書メモ」(森川友子)へようこそ。ここでは、読んだ書籍に勝手に星をつけ、勝手な書評をさせていただきます。
もし三日坊主に終わったらごめんなさい。
書名 | 著者 | 出版社、出版年 | 勝手星 | 勝手書評 |
イメージの治癒力 自分で治す医学 |
マーティン・L・ロスマン 著 田中万里子+西澤哲 訳 |
日本教文社 1987年 | ★★★★★ | 身体的な不調を持つ方には、たいへん良い本ではないでしょうか。 身体的な疾患に対するイメージワークの効力がいかに大きいかということや、その基本方法が丁寧に説明されたあと、「痛み」「頭痛」「アレルギー」「風邪」「癌」「喘息」「心臓疾患」「関節炎」「高血圧」等等といった疾患別に、イメージ療法の方法が載っており、手順もきわめて具体的です。 心理学になじみがない人でも、自分でこの教示をテープに吹き込み、自分の体調が悪いときにやってみるということができそうです。 この本には、イメージの効果に関するリサーチ(イメージを用いることで何パーセントの病人がよくなった、といったこと)は載っていません。イメージ想起の仕方や、もともとも疾患において個人差が大きく、実験上の統制をしにくいため、敢えてリサーチはしていないということです。しかし、一般開業医としての豊富な臨床例が次から次へと引用されており、十分な説得力があり、リサーチデータがほしいといった不足感は起こりません。 なお、フォーカシングをする人間としては、ロスマンのイメージワークの手法があまりにもフォーカシングに似ていることに驚かされます。(私が買った書店では)医学書ということで、心理学の書棚に置いてありませんが、これはフォーカシングの書籍ではないですか‥?と言いたくなりました。 なんせ身体症状についてフォーカシングのような手順でイメージワークを行っているのですから。 (巻末の書籍リストの中には、ゲシュタルト療法、フォーカシング(ジェンドリンの黒い本)、NLP関連の本等々が載っており、そのあたりの実践的な臨床手法を、身体症状を持つ人のためにまとめたものであることが伺えます。) ちょっとかいつまんでみますと、「症状をイメージ化する」「『それ』に対して』自分の気持ちを伝えてみる」「返ってくる答えをそのまま受け止める」「『それ』が自分に何を求めているのか、どうしてほしいのか、といかけてみる」‥。 ‥‥そっくりでしょ。(ただ、はじめる前のリラックスを、フォーカシングよりも深めにとることは異なっています)。 自分は、フォーカシングを初心者の方に教える場合、フォーカシングのセオリー通り、「肩こりや腹痛といったはっきりした身体の感じはフェルトセンスではないので、もう少し気持ちをふくんだ、漠然としたからだの感じに気付いて、触れていきましょう」と教示してきました。それはそれで意味があったと思いますが、反面、身体症状を取り扱わないできたことは、もったいないことであったと、この本を読んで思いました。 そこに症状があるときは、捨て置かず、「やっちゃて」よかったわけですね。 (2005年9月6日 記載) |
楽しく、やさしい、カウンセリングトレーニング フォーカシングワークブック |
近田輝行・日笠摩子 著 | (株)日本・精神技術研究所 2005年 |
★★★★★ | 東京を中心とした著者によるフォーカシングのワークブック。九州を中心とした拙著「マンガで学ぶフォーカシング入門」と同時期に発売され、「だぶるのでは!?」と汗をかいたものですが、結果的には、用途が違うという印象をお互いが持ち、東京と九州とで、胸をなでおろしました^^;。そして、内容的に、敬意を持って使わせていただこうと感じた書物です。 特徴として、 ○ 初心者ご本人の方にも良いと思われますが、特に、ワークショップを担当する人にとって利用価値が高いと思われます。 ○ 初心者に一歩一歩体験してもらいながら進めるためのワークが充実しているように思います。 ○ フォーカシングに特に親しんでいない指導者の方でも、フォーカシングと意識せずに利用できるものがあるように思われます(少し手を入れて教育現場で利用する、職場のカウンセリング研修に利用する など)。 ○ ワークシートがA4一枚ですぐコピーして配布できるようにページ配置されています。また、ワークの事前説明の部分も、半ページ等で抑えられており平易な説明で字も大きいため、そのままワークショップで配布できます。ワークシートの部分は、グレイスケールになっており、きれいです。 ○ ワークの内容は、実践を重ねた上でわかりやすいものを考案されてきた東京の執筆者オリジナルのワークや、アメリカでのフォーカシングワークショップに使われているものなどで構成されています。九州の上記本に載せているワークとは内容が異なっています。一つ(夢フォーカシング)しかだぶっていません。 個人的には、片山氏の「ぐるぐる描き」というワーク、全くはじめてですし、行い易いように思いますので、体験してみたいと感じます。 最後に、だいじな特徴を挙げるとしましょう。 ○ 大きさ、厚さ、表紙の地の色(白)が九州本と同じであるため、二冊を並べて立てて置くときれいです。(笑) (2005年9月6日 記載) |
遊戯療法の実際 | 河合隼雄 編著 | 山王教育研究所 2005年 |
★★★★ | 「プレイはするけどプレイについてじゅうぶんに勉強した感が無い」という人が、自分も含めて少なくないと思われる中、プレイセラピストが自分を整理するうえで、よい書物と思いました。複数のセラピストの事例が紹介され、それぞれに河合隼雄先生のコメンがついています。 プレイセラピーはけっこう恣意性の高い解釈(ストーリーを読むという意味での解釈)を許してしまう素材だと思います。よってある意味恐ろしいことに、セラピストの心に明に暗に思い浮かんだ解釈がセラピーの流れにダイレクトに反映され、「その子とそのセラピストでなければ生まれてこなかった過程」になっていくものだと思います。 そういうわけで、セラピスト本人による解説がかっちりと嵌められていている事例を読むと、「まあ、結果がこうなら、これでよかったのかな」と、納得させられ、「でも、自分だったらどうするかな?自分とこの子がやっていたらどんな筋になったのかな」というのが想像しにくく、それ以上の感想が浮かんできにくい、ということもがあるように思います。 これが、プレイセラピーの書物が、ともすればおもしろくないと感じられる理由の一つだと思います。 しかし、この本のように、セラピストが記載した事例に河合隼雄先生がコメントをつける、というやり方であると、複眼視で広がるものもあり、プレイセラピーの事例も読みやすくなります。 事例選びも良く、「ああ、あるある、こういうケース!」という事例が並んでいます。 また、複数のセラピストによる事例が載っていますから、やり方も微妙に違っていて、読む人は、自分がどのようなスタイルでやっているか、やれそうか、考えることができます。 よってプレイセラピーの書物として理想的なスタイルと思われました。 だから、いいんです。ほぼ、いいんですけどね。 残念ながら、一部のセラピストの事例の書き方が、決定的に私の好みと合いませんでした。事実と解釈とがごっちゃに記載されている事例がありまして‥。 プレイセラピーの事例で記載される内容は、 1 クライエントやセラピストの「行動」「言葉」「表情」 2 セラピストの感情(ふいに寂しい思いがしてきた、等) 3 それらに対するセラピストの解釈 がありますよね。 1は、事実 2は 主観的事実 3は、主観 ですよね(だと思うんですよ)。 これをぜんぶ「起った事実」みたいな「筆のタッチ」で書いてある事例があったわけです。で、「それでいいのかよ」、と‥(全部がそうではありませんでしたし、この受け取り方自体が私の主観ですから、どの事例にそれを感じたと言うことは、ここでは控えます)。 極端な例をひっぱってくれば、メラニークライン等の、精神分析の人の記述はそういう傾向があると思うんです。「○○くんが刀を振るってきて、私を孤独にさせ、万能感を誇示した」みたいな。それはどうなんだろうと‥。孤独に感じたり、万能感かなと思ったのはセラピストの主観だから‥。 私としては、「○○くんが私に刀を振るってきた」「何度も切られながら、私は孤独感を感じた」「もしかして○○くんの心の中もこうなのかなと私は想像した」と、主語を区別しながらとらえ、書いたものが好みです。 「もしかして○○くんの心の中は‥」という、セラピストの主観でいろいろ考える部分が、プレイセラピーにおけるセラピストの遊びではないかと、私は思います。で、「‥そう解釈するのはおかしいかな?でも、そう考えたら前回の遊びも、日常場面のあれも、けっこうつながるし‥」なんて思ってセラピストが楽しむ。しかもそれを「仮説」にとどめ、−あそびを持たせておいて−、試しに遊んでみる。そういうのがプレイセラピーじゃないかと、‥あくまで私のやり方ではそう思っています。 だから、プレイセラピーの事例も、事例を担当した人の解釈(考察)を事実と一緒に丸め込むのではなくて、個人的解釈として主語を明確にするか、場所的に各セッションの終わり等に書いてくれることにより、「読んでいる人」ももっと自由に独自の解釈を羽広げて遊べるようになるのでは、と‥。 要は「読んでいる人にも遊ばせてほしい」なあと思う次第です。 「ああ、セラピストうまい、解説者うまい」で終わる書物だけではなくて、「読んでいる人がもっと自分の解釈を作って遊べるようになる、そこを訓練するための書物」も、これとは別にあったほうがいいのではないかと‥。 ‥でもまあ、良書と思いますので、九産大図書館に入れるように申請します。(2005年9月6日 記載) |