「住民の移動を守りたい」という自治体担当者の切実な想いに触れ、研究人生が大きく変わったと語る稲永教授。昔からの「乗り物好き」が高じ、現在はICTを活用して地域の公共交通をリデザインする最前線に立っています。データで現状を“見える化”し、現場の課題に寄り添うことで、社会をどうアップデートしていくのか。理論と実践を往復する研究の裏側に迫りました。
この研究との出会いのきっかけ
「住民の移動を守りたい」
その思いに胸を打たれて
私は、ICT(情報通信技術)を活用して地域の公共交通をより使いやすくする研究を進めています。学生時代は並列計算機、今でいうスーパーコンピュータの研究というまったく異なる分野の研究をしていたのですが、昔から車が好きで「いつかは乗り物に関する研究がしたい」と考えていたこともきっかけのひとつになりました。
本研究との出会いのきっかけは、2013年に研究室の学生と一緒に参加した産学連携プロジェクト。芦屋町の『芦屋タウンバス』の利用促進をテーマにしたもので、担当の方々と密に関わった経験が、私の研究人生を大きく変えました。
地域の公共交通は人口減少や財政制限の影響を受けやすく、現場には「住民の移動をどう守るか」という切実な問題があることを知るとともに、「困っている住民のために交通を守りたい」、「何とか改善したい」という担当者の言葉に強く胸を打たれたのを覚えています。この課題を解決するためにICTの力を活用することを考え、研究に取り組むことを決めました。
研究について
システムやデータの力で
地域を支える仕組みづくり
地域の公共交通の分野はICT化が進んでおらず、まだアナログな業務を続けているケースが多いという問題がありました。そのため、公共交通の利用促進という課題に取り組む前に、現状がどうなっているのかを把握する必要がありました。そこで、まずは現状を“見える化”するためのデータを集めるシステムをつくることからスタートしました。
また、自治体では基本、5年間の地域公共交通計画を立てて動いていくのですが、その際に私たちのシステムで集めたデータに基づいて考えていただくようにする=“データを分析する”のが、研究の次のステップとなりました。地域の公共交通は実際に動かし始めると、住民の方からさまざまな要望が出てきます。その内容はポジティブなものだけではなく「なぜここにバス停がないのか」といった話も…。効率化のために使われていないと思われるバス停をなくそうとしても「NO」と言われることがほとんどで、うまく計画が進みません。しかし、バス停ごとの乗降者数など、根拠となるデータがあれば適切な場所にのみバス停を設定することが可能。結果、より効率的なサービスを住民に届けることができるようになるのです。
芦屋町の『芦屋タウンバス』をきっかけに、現在もさまざまな行政と公共交通に関する課題解決に取り組んでいます。最近では、バスが現在どこまで来ているか位置を確認することができるシステムを取り入れるなど、ICT化はどんどん進んでいます。
今後の活動・目標について
芦屋町の例を全国に広げ
公共交通のアップデートを
この研究に取り組み始めて10年以上が経ちましたが、私が重視しているのは「地域の生活を支える交通をどう維持し、どう改善するかに貢献する」ということ。研究が進むことで、高齢者や子どもなど車を持たない人の移動を支える、たとえ人口減少地域であっても維持しやすい“続けられる交通”モデルをつくるための技術的支援を可能とする、観光地や地域としての魅力が向上するというメリットに加え、他の地域に応用可能な公共交通モデルがつくれるなど、大きな社会的効果が期待できます。
私の研究室には「公共交通に関する研究がしたかった」という学生やそのために九産大に入学した学生もいますが、公共交通のことは関係なく「研究を通して地域に貢献したい」、「行政との共同プロジェクトに取り組んでみたい」という学生も多数。一人ひとりに「自分の技術が社会のどこで役に立つか」を実感してもらえるよう、交通データの整備・見える化・分析、アプリ開発、オンデマンド交通の予約・配車システムの開発、自治体・交通事業者との連携(現地調査・意見交換)といった実践を重視した活動を行っているのが特徴です。
同じ福岡県内でも交通格差は大きく、恵まれているのは、ごく一部の地域のみ。それ以外はかなり苦しい状況です。これからも現場の課題に寄り添った実用的な交通改善の仕組みづくりを行って公共交通全体の底上げをしていくとともに、技術だけでなく、現場を理解し、人のためになる研究・技術に取り組める人材を育てていくことが目標です。
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- Q.趣味はなんですか?
- 旅行やドライブなど
移動そのものを楽しむこと
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- Q.好きな食べ物は?
- ● いちご● 蕎麦● 赤身のしっかりした肉料理 ● 鰻のせいろ蒸し
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- Q.今、興味・関心があることは?
- 旅行やドライブをしながらさまざまな場所で“移動のしやすさ・しにくさ”を体験すること
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- Q.座右の銘を教えてください
- 現場で得た実感を出発点に、自分の興味に正直に没頭しながら人の役に立つことを追求する
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- Q.「九産大生」の印象は?
- 可能性に満ちていて伸びていく余地を大きく持っている
九州産業大学公式YouTubeチャンネル
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子どもたちが
飢えない社会をつくる -
九州の農業を
ロボットの力で支える -
海洋プラスチックについて考える
”きっかけ”を与えたい -
写真を通じて
人と場所のつながりを探求する -
食の安全・安心を追究し、
食品ロスを減らしていきたい -
新しい冷媒技術で
未来の人類を救いたい -
快適で健康的な
居住環境をデザインする -
スポーツを続ける
「明確な効果」を広めたい -
個人が、楽しみながら
「水害対策」を行う時代に -
ラーメン店のおいしさを
お土産品でも再現したい -
日本の観光を
もっとおもしろく変えていく -
暮らしも人間性も豊かになる
「言語学」の魅力 -
「工作」と「遊び」の力で
地域の課題を解決したい -
新興国の経済研究で
日本の経済を輝かせる -
九州から世界への挑戦を
研究を通して応援したい -
ICTを活用し
地域の公共交通の利便性を
高めたい