暮らしも人間性も豊かになる 「言語学」の魅力
三浦 香織 教授
国際文化学部 国際文化学科

 幼少期から言葉遊びの楽しさやその音に惹かれ、言語学に夢中になっていったという三浦香織教授。海外からの視点を持って日本語を研究し続けてきたからこそわかったこと、言語学の研究が社会貢献につながる可能性などについてインタビューで話を伺いました。

三浦教授のこれまで

言葉の楽しさや英語への興味
それが言語学との出会いに

 「ねえちゃんと風呂入った?」という文を聞いて何を想像しますか。これは「ねえ、ちゃんとお風呂入った?」と「姉ちゃんとお風呂入った?」という2つの意味が生まれることを利用した言葉遊びですが、私は幼少期からそうした言葉の意味の多様性、言葉そのものの響に惹かれていました。百人一首の響きや詩の韻の心地よさも好きで、この頃から“言葉に敏感”だったのだと思います。
 それは日本語だけでなく、英語についても同じだったんです。テレビから聞こえてきた日本語ではない音に衝撃を受けた日…それが英語との出会いだったのですが、「どんな言葉なんだろう」、「アメリカってどんな国なんだろう」と興味が広がっていったことを覚えています。地元にハワイ大卒の先生が開いている英語塾があり、小学校高学年でそこに通うようになったことが私の“国際交流の旅”の始まり。その後、大学1年生の時に「言語学」という学問分野に出会えたこと、その言語学を「本場で学びたい」と英国エジンバラ大学大学院に留学したことが今につながっています。

研究について

私たちの暮らしを支えている
「日本語」の世界を知ってほしい

 イギリスで英語に関する研究をしていたとき、「なぜ日本語をやらないの?」と指摘を受けたんです。確かに日本語は独特の言語なので、それを自由に扱えるのは日本人の特権。言語学の始まりは欧米であり、対象が日本語であっても重要な分析は英語で行われているため、それ以降はイギリスで日本語に関する資料を大量に集め、研究を深めていきました。

 私たちは物心ついた時にはすでに日本語を自由に使えているため、それについて改めて考えたり、疑問視することはほぼありませんよね。私の研究はその部分にメスを入れることだとイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。例えば、「今朝は朝食にパンを食べた」という文を人はどうやって理解しているのかを考えてみてください。この文を丸ごと暗記していて使ったわけではないと思いますし、「このシーンではこの文を使いなさい」などと親に教えられた記憶もないはずです。言語学者はこのような文を分解し、分析して定式化することが仕事。「今朝」「は」「朝食」など文を分解し、各パーツとパーツの関係はどんなものなのか、「今朝」+「は」は良いけど「は」+「今朝」がダメなのはなぜかなど、人間が文をつくり上げる過程にどんな規則があるのかを日々考えています。そうした中、私が最近研究しているのは、「言葉のある要素が別の要素を『修飾する』というのはどういうことか」です。「修飾する」とひと言でいってもさまざまな表現があり、人間の言葉はさまざまな意味を生み出しています。そのことをいかに無駄なく、広範な言語を対象に簡潔に説明するかが私の研究。先日提出した論文では、日本語の「賢く」や「賢くも」が文の中でどことどのように関係するのかを見ていくと、英語の「stupidly」や「wisely」の意味がより詳しく分析できる可能性を提案しました。主語や述語、名詞など、メジャーなものだけを見ていると見えてこないものが実はいっぱいあること、副詞について考えると意外と核の部分が見えてくることをぜひ知ってください。
 この研究分野は、私たちが文章を読む時、書く時、電話をする時、Siriに話しかける時、独り言…などなど、365日24時間、誕生して没するまで影のようにみなさんの生活にあると思ってください。ふと何かを考えた時、言葉や文を作る能力がそれを支えているんです。

今後の活動・目標について

日本の教育に還元することで
研究を通した社会貢献を

 研究を通してもっと社会貢献をしていきたい、という思いを抱いています。言語学の分野で研究したことを社会に還元していくとなると、本を出版したり、講演会をしたり…となりますが、個人的にはそれだけでは不満で。これまで自分が得てきたものを若い世代に伝えていきたいという思いがあり、もっと日本の教育に現代言語学の叡智を反映させられないだろうかと考えています。それは、日本の英語教育の分野でも同じです。特に文を構成する場合に、副詞的な要素の生起位置(文中でどこに置かれるか)が解釈に大きく関わることは、どこかで教わらないと一生分かりません。特に日本語はスクランブリング言語といって、語順が変わっても文全体の意味が変わりにくいので、語順が大きく影響する英語と違ってさほど気になりませんが、それだと英語を使う時に大きな障害になってしまう。こうしたことが日本の検定教科書では教えられていないのが現状なのです。日本語との語順の違いなどを理解したうえで、リアルな英語を若い時から伝えていければ、何年も英語を勉強しているのにほとんど会話もできない、という状況を緩和できるのではないかと考えています。

MESSAGE TO SUTUDENTS
「言葉」というのは「人間」。その人の”根”がでるものなので日頃から敏感になってほしい
  • 先生に質問
  • Q.趣味はなんですか?
    習い始めて5年になるアコースティックギター。
    発表会やクリスマスコンサートにも参加しています
  • Q.好きな食べ物は?
    和食や地中海料理。素材が良い料理を食べると体が元気になります
  • Q.今、興味・関心があることは?
    子育て中の母として人の心と環境の問題について興味があります。大人の無関心と過保護が子どもの生活の質、
    教育の質を後退させているのではないか、と思うことが多々あります
  • Q.座右の銘を教えてください
    七転八起
  • Q.「九産大生」の印象は?
    可能性のかたまり!もっと自分に投資すべし!