7. キーボード派の基本


一ヶ月後
真臼: やー、久しぶり。
来居: 一ヶ月ぶりだね。
タッチタイピングできるようになった?
真臼: 君にいわれたとおりにやってみたら、ちゃんとできたよ。
来居: じゃ、ちょっと入力してみて。
真臼: (渡された文章を見ながら両手でパチパチ入力する)
どう?
来居: なかなかいい感じ。
やればできるじゃないか。
真臼: けっこう速いだろう。
来居: 君の一番うれしいことだね。
真臼: 実は10日前ぐらいに、すでにタッチタイピングができるようになった。
すぐ来ようと思ったけど、君をびっくりさせようと思って、それから入力スピードが速くなるように一生懸命練習したんだよ。そしたら、けっこうおもしろくなって、はまってしまった。
来居: 君は凝り性だね。
真臼: 速く打てるのはうれしいけど、最近指が痛くなった。
君はマウスを使って腱鞘炎になるといったが、考えたらそのほうがまだましかもしれない。
来居: どうして。
真臼: マウスって、片手だけを使うから、腱鞘炎になっても片手ですむ。
キーボードで腱鞘炎になったら両手とも痛くなるじゃないか。
来居: (笑)君もだんだん屁理屈が増えたね。
ところで、1日何時間練習したの?
真臼: タッチタイピングができるまでは、毎日2時間ぐらい練習したが、この10日間ほどは寝る時間以外はほとんど1日中練習していた。
来居: それじゃ指が痛くなるはずだよ。
何でも限度っていうものあるからね。
真臼: わかっているよ。
ただ早く君に追いつこうと思って、ちょっと無理をしただけだ。
来居: 私に追いつこうって?
真臼: 君より速く打ちたいんだ。
来居: 私は別に速いほうじゃないよ。
しようと思えば、すぐ追いつくよ。
真臼: それは本当?
来居: 本当さ。
速いほうじゃないけど、自分には十分だから、これ以上速く打とうとか考えていないよ。
真臼: それは意外だ。
キーボード派はみんなもっと速く打てることを目標にしているのではないの?
来居: タイピングの仕事をやっている人は別として、普通の人はある程度速く打てればそれで十分。あまり無理して速く打ったら疲れるから、自分に合うペースで打つのが一番いい。
真臼: だんだんわからなくなった。
それでは、キーボード派の目標はいったい何なの?
来居: 目標というほどのものじゃないけど、キーボード派の要旨は手をホームポジションから離さずにすべてのことを対処することだ。
真臼: どうしてホームポジションにそんなにこだわるの?
来居: 考えてみたらわかるよ。
ホームポジションにこだわるじゃなくて、もっと根本的にいえば、もっとも効率的に作業できることにこだわっている。
真臼: ホームポジションと効率はどんな関係があるの?
来居: 大いに関係があるよ。
一番のポイントは目を使わずに手で全部できることだ。
真臼: そんなことをいうなら、マウスを使うときだって、マウスを見る必要がないから、手で全部できるよ。
来居: できないことはないけど、効率が違う
基本的に、マウスは入力に向いてないし、操作にも必ずポインタの移動が伴うから、けっして効率的とはいえない。そしてマウスそのものを見る必要がないけど、つねにマウスのポインタを見なければならないから、その意味で手で全部操作できるとはいえない
真臼: しかし、キーボードで操作するときだって、見なければならないときはあるだろう。
来居: 基本的にないよ。
真臼: 文字を入力するときはホームポジションで全部できるから見る必要がないけど、カーソルを移動したり、文字を削除したりするとき、キーがかなり離れているから、ホームポジションからじゃできないよ。
来居: 君の言うとおりだ。
カーソルを移動する「矢印」キーや「Delete」キーなどはホームポジションから遠すぎる。それらを使うためには一回ホームポジションから手を離さないといけないんだ。
真臼: それでやはり見ないといけないだろう。
来居: それは確かに問題だ。
実はどうしてもそれらのキーを使わなければならないとき、非常に苦痛に感じてるんだ。
真臼: なんだ、けっきょくキーボード派にもいろんな問題があるんだ。
来居: そういう問題はあるけど、だいたい解決できる
真臼: どうやって解決するの?
来居: 以前の話にもちょっと出ていたキーカスタマイズすれば解決できるんだ。
真臼: その言葉は前も聞いたけど、どんなことか、よくわからないんだ。
来居: キーの機能を自分の好みで変更することだ。
例えば上の話しに出ていた「カーソル」キーや「Delete」キーのほか、ホームポジションから離れているキーをすべてホームポジションで操作できるように変更する。そしたら、手がホームポジションから離れずにすむんだよ。
真臼: そんなことができるの。
君の話を聞いていたら、キーボード派という呼び方はあまり適切じゃないような気がしてきた。
来居: どうして?
真臼: けっきょくホームポジションから操作できるキーだけを使っている。キーボードの上の方にあるファンクションキーや右側にある機能キーとテンキーはほとんど使っていないだろう。それではキーボード派というより、ホームポジション派と呼んだほうがより正確じゃないか。
来居: なるほど、君の言うとおりだ。
まあ、その点がキーボード派のポイントなんだよ。