5. タッチタイピングの薦め


来居: キーボードを使いこなすための基本はなんといってもタッチタイピングだよ。
真臼: タッチタイピングって、ブラインドタッチのことなの?
来居: そのとおり。
いま、ブラインドという言葉はいろんな事情であまり使わないから、ブラインドタッチのことはふつうタッチタイピングというんだ。
真臼: タッチタイピングって、私が一番苦手なことだ。
いままで何回も挑戦したが、いまだにできない。
タッチタイピングって、どんな利点があるの。
来居: いくつかの利点が考えられる。
まず、疲れない
次に、より速く入力できる。
最後にキーボードが好きになり、自信を持てるようになるんだ。
真臼: 疲れないって、どういうことなの?
来居: 君は一枚の文書が与えられたとして、実際どのように入力するの。
真臼: うむ、まず文章をみて、先頭にあるいくつかの単語を覚えて、それからキーボードを見て、覚えた単語を入力し、そして画面を見て、入力が正しいかどうか確認する。
来居: 君の入力方法を分析すると、3ヶ所を見ることと短期記憶が含まれる。さらに「探す」という動作も暗黙のうちに含まれている。キーを探すことと次に入力する文章の箇所を探すことだ。
真臼: そういうことになるね。
来居: 目線を3ヶ所の間に往復させるのはけっこう時間がかかる。文字を記憶するのは疲れるし、間違いをももたらす。そして「探す」ことは疲れと時間浪費の最大原因だろう。
真臼: それじゃ、タッチタイピングで入力するときはどんな感じになるの?
来居: まず、キーボードを見なくてすむ。
キーボードは指だけに任せて、脳を使うことさえないような感じだ。キーボードを見ないということは、入力している間は、目を文章から離す必要がないので、「記憶」の動作も不要だ。
それだけじゃない。キーボードに自信があるから、入力したものを確認する必要がないんだ。英語の文章を入力するときは、入力が終わるまで画面を見る必要がない。
日本語の場合は、正しく入力しても誤変換の問題があるので、ちょっとやっかいだ。しかし、最近の日本語変換ソフトはかなり賢くなったので、全部入力してから最後に確認してもほとんど問題がない。実際、入力するときはずっと文章だけを見つめ、手が勝手に動いてくれる。もちろん、「探す」という動作も必要じゃなくなる。
君の入力と比べてみて、タッチタイピングで入力するとき、疲れの要素はかなり少なくなるし、無駄な動作がないぶん、より効率的に入力できるんだ。
真臼: なるほど。
しかし、タッチタイピングの人でもよく「疲れる」という話を聞くけど。
来居: どんな方法でも、長時間したら、疲れないことはないだろう。
しかし、時間の長さではなく、同じ量の文章を入力することで考えたら、タッチタイピングによる疲れはそうじゃない人に比べたら何分の一程度だろう。
もちろん、何でも「しすぎ」たらいいことはないけど。
真臼: 君のいった「疲れない」と「入力が速い」はわかったが、最後にあげたメリットは単純に心理上のもので、実際目に見えるメリットではないだろう。
来居: 君たちマウス派の悪い癖は目に頼りすぎることだ。何でも目に見えないと気が済まない。
心理的なものは目に見えないが、「好きになる」「自信を持つ」などは人間にとって絶対欠かせないことだ。その心理状態は直接に見えなくても、実際いろんな行動につながっているんだ。
キーボードのことでいえば、好きになれば、キーボードのいろんな便利なところを自分から探したり、工夫したりするようになる。キーボードに自信をもつようになれば、いろんな場面でストレスを感じなくなったり、ちょっとした優越感を得たりするから、コンピュータに対するコンプレックスアレルギーもなくなるだろう。
真臼: ちょっと大げさじゃないの?
来居: いや、けっして大げさではない。
実際、ほとんどの人はタッチタイピングによってコンピュータ・アレルギーを克服できるんだ。
コンピュータを使いたければ、まずタッチタイピングを習得することだ。
真臼: まあ、とりあえず、君の話を信じることにしよう。
それじゃあ実際に、タッチタイピングはどうやって覚えるの?
どうも私には無理のような気がする。
来居: 誰でもできるよ。
真臼: じゃあ、今度はその勉強法を教えてもらえる?