「どの大学に行くか」よりも「大学で何を学ぶか」が大事

 近年、北部九州は自動車産業・半導体産業に支えられながら発展しています。隣国である韓国・中国の経済発展も日本経済へ大きな影響を与えています。機械・電気・情報技術に関するエンジニアにとって、日本でトップクラスの好環境に九州産業大学理工学部は立地しています。
 さて、これまで日本が経済発展してきた背景には、「日本人の勤勉さ」が挙げられます。しかし、安い労働力で大量生産可能な中国・インドの台頭、また、工業技術の進歩により、単純労働作業は産業用ロボットで行えるようになりました。大手企業の生産ラインで働く人々はほとんど派遣社員です。「○○自動車で働きたい」「○○電機でロボットの研究したい」「○○製作所でスケールの大きな仕事がしたい」など、職業に対する夢は数え切れないほどあるでしょう。しかし、希望の会社に入って希望の職に就ける人はほとんどいませんし、真面目に働くだけでは幸せにはなれない場合が多くなっています。会社では競争の連続です。競争に勝たなければなりません。競争に勝つためには知識から知恵を生み出す力と実践力と忍耐力が必要です。
 大学選びは慎重にすべきです。大学ブランドに憧れる生徒がほとんどでしょう。しかし大学ブランドだけで進学先を選んで良いのでしょうか?「どの大学に行くか?」より「何を学んだか?」が重要なのです。大学1,2年次の基礎教育はどの大学もほとんど同じです。つまり、3年次から本格的に始まる専門科目と卒業研究で「何を学ぶか」が大事なのです。私の研究室では制御技術者としての基礎的な技術はもちろん、人間教育にも力を入れています。ある時は皆で学び、遊び、ある時は家庭教師のように1対1で指導します。エンジニアにはなりたいけれど、たまたま中学・高校で数学や物理が苦手になった生徒もたくさんいるでしょう。大丈夫です。私の研究室にも数学や物理が苦手の学生がたくさんいます。毎日のように私から指導を受けています。苦労は多いと思います。でも、これまでサボっていたわけですから仕方ありません。文章もまともに書けません。私から小言ばかり言われます。でも、今、修正しなければ社会に出て恥をかくのは彼ら自身なのです。自分の無力さを知り、小言に耐え、成長しなければなりません。
 九州産業大学理工学部は、情報科学、機械工学、電気工学を柱とした3学科(情報科学科、機械工学科、電気工学科)で構成し、情報メカトロニクスを中心とした1つの専門+周辺技術を学ぶ仕組みを作っています。これまでの日本のものづくりは1つの物を大量に生産するオートメーションに支えられて成長しました。最近は一人一人の個性を大事にした付加価値の高いものづくりが主流になっています。この少品種大量生産から多品種少量生産への生産システムの変化に乗り遅れた日本は、これまで得意としてきた白物家電(洗濯機、冷蔵庫、TVなど)、半導体(ICチップ、メモリなど)等で他国から日本の主要メーカーが買収される事態にまで追い込まれています。このような社会変化に迅速に対応するためには、1つの専門+周辺技術を学ぶことによる多方面から物事を考察し解決するシステムデザイン技術が必要になります。本学理工学部では、3年次のプロジェクトデザイン管理で3学科合同で課題解決型教育(PBL)を実施し、社会変化に迅速に対応できる人材を育成します。
 このように、本学では「ものづくり」に主眼を置き、建学の理想である「産学一如」を目指して、産業界で役立つ教育を実践しています。世界最先端の新技術を達成するため、日々研究に取り組んでいます。実験結果に一喜一憂することもあります。自然現象を深く探り、応用・改善できるエンジニアは非常に楽しく夢のある職業です。本学理工学部はその夢への第一歩になることでしょう。
 最後に、繰り返しになりますが、「どの大学に行くか」より「大学で何を学ぶか」が大事であることを認識ください