23_九州産業大学_広報誌_vol
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九産大から世界へ!TOPICS分子レベルの解析分野で運用可能な世界初のカラー電子顕微鏡を開発、そして販売へ!九州産業大学(以下九産大)と、株式会社アイエスティー(福岡市南区 代表取締役 礒部信一郎 以下 IST )、株式会社TCK(福岡市東区 代表取締役 小坂光二 以下 TCK)は分子レベルの解析分野で運用可能な世界初のカラー電子顕微鏡を開発し、TCKより「FST-1000」の名称で7月から販売を開始しました。SHINICHIRO ISOBE生命科学部 生命科学科 礒部 信一郎教授1960年福岡県生まれ。1987年九州産業大学工学部工業化学科卒業。2001年九州大学大学院総合理工学研究科分子工学専攻博士後期課程修了。2004年九州大学先導物質化学研究所非常勤講師、株式会社IST起業。2006年入職。2012年工学部物質生命化学科教授。2014年九州産業大学医療診断技術開発センター所長就任。2017年より生命科学部生命科学科教授。することが、商品化へのボトルネックとなっていました。 FST︲1000は半導体製造装置のノウハウを活用して、位置合わせを試料の画像ではなく試料がおかれた基板の専用マークを利用することにより、技術者を介さず簡単に高倍率のカラー電子顕微鏡画像を得るとともに、細胞の生理活動を可視化する蛍光観察と、細胞の微細構造を特定する電子顕微鏡観察を同時に行い多次元・高精細なイメージングを実現したのです。 また、九産大とISTでは光や電子線に対する耐久性などの物理的安定性が高く室温で10年以上の長期保存が可能という特性を誇る、独自開発の国産初の免疫染色用蛍光色素(商品名 Fluolid フルオリッド)の蛍光強度やコーティング剤である酸化オスミウムに対する抗褪色などの性能を更に強化した新製品を開発し、FST︲1000の性能を最大限に引き出す消耗品としてTCKとISTより同時販売します。これからの医療の発展、貢献のために 先端のバイオ研究や医療診断の領域においては、細胞の一部などの同一サンプルを高倍率で数年の長期にわたり継続して観察したいというニーズがあります。しかしながらこれまで、実用に足る解像度の顕微鏡がなかったことと、従来の外国製蛍光色素では1回のレーザー光や電子線の照射により分子構造が破壊されて褪色するとともに、長期保存ができず継続観察は困難でした。 FST︲1000とFluolidの併用により、高倍率カラー画像の継続観察を可能とし、例えば、病理診断において、細胞を染色し分子レベルで観察することで、がんを未病レベル同等で超早期発見ができるなど、先端の医療診断の領域での活用を見込んでいます。 今後、20,000倍対応の蛍光電子顕微鏡と蛍光色素を商品化して高度な分析要求に応えるとともに、継続して機能強化を進め基礎研究や臨床データ解析の高度化に貢献していきます。“商品化”そして“販売”するために FST︲1000は低倍率ながらカラー画像が得られる光学式顕微鏡と高倍率であるがモノクロ画像しか撮影できない走査型電子顕微鏡を組み合わせ、それぞれで撮影した画像を合成処理することにより両者の長所を融合した相関電子顕微鏡システムで、2種類の顕微鏡間の試料移送の位置合わせに、半導体製造装置の技術を応用した新たな試料搬送システムを開発することにより、専門の技術者の手を介さずに7,000倍の高倍率カラー画像を得ることを実現した世界初の全自動蛍光顕微鏡システムです。 相関顕微鏡は一部の企業によって製品化されていますが、顕微鏡間の試料移送の位置合わせが難しく、生命科学や医療分野でのニーズを満たすレベルには達していませんでした。 九産大医療診断技術開発センターでは、2016年に試料移送に自動ロボットアームを開発し、九産大とISTが共同で開発した国産初の免疫染色用蛍光色素を使って世界で初めて7,000倍のカラー画像の撮影に成功しましたが、試料移送と位置合わせに専門の技術者でも30分以上要国産初の免疫染色用蛍光色素2023年6月8日 記者発表後のメディア取材の様子「Made in Japan, from Kyushu」を合言葉に研究開発にさらに力を入れたいと語る礒部教授(左)生命科学部生命科学科 礒部信一郎教授、(右上)「FST-1000」、(右下)ラット十二指腸絨毛先端部切片3,000倍142023 OCTOBER

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