23_九州産業大学_広報誌_vol
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「局報」史料のデジタル化 菅沼講師が新たに取り組んでいるのが、国鉄門司鉄道局(現在のJR九州の前身)「局報」史料のデジタル化です。局報は国鉄における日々の運転状況や業務上の伝達などを記録した現代の企業日報に近いもの。戦前期に作成された記録であるがゆえに損傷が激しく、読み解くためにはまずデジタル化して整理する必要がありました。デジタル化の技法は同研究室の学生とともに試行錯誤して確立させました。学問の発展の可能性 「局報を一読し、これまで戦前は全国から伊勢に修学旅行生が集まったとされていましたが、九州では霧島神宮が多かったことが分かりました。記録を読み解くことで九州を中心とした観光の歴史をアップデートすることができるのではと考えます」。 さらに局報は観光史以外の研究にも与える影響が大きいといいます。「戦前から戦後にわたる継続的な記録からは観光客輸送以外にも国鉄が果たした役割を、軍事や経済などさまざまな面から詳細に検証することが可能です」。デジタル・アーカイブ化により多くの学問が発展する可能性もあり、昨年全国7つの大学、2つの機関の研究者と共同研究グループを立ち上げました。それぞれの専門から局報を使った研究を進めています。社会の本質を捉える目を養う 菅沼講師は通常の授業やゼミにおいて、日本社会の構造を踏まえ「持続性のある観光とは何か?」と本質を問いかけることを大切にしています。「社会学は社会の常識を問い直す学問です。明確な正解がない社会問題を考えるのに適した学問でしょう。学生には試行錯誤も含めて楽しんで欲しいですね」。[門外不出の貴重な史料]戦前の門司鉄道局の運行予定表などを記載した「局報」。これまでは外部に公開されていない史料でしたが、JRのOBだった九産大の教員が橋渡しとなり、借用することができました。傷みが激しく、中身を精査するにはデジタル化が必須です。先生の“同志”としてプロジェクトに参加 菅沼先生の授業は観光から医療制度まで学問の領域が広く、まさに“社会”を学んでいるという感覚です。隔週で一線級の論文を要約する授業には苦戦しましたが、読解力と整理力の成長を実感します。局報のデジタル化は技法を考案&最適化する過程に携わり、会社の事業立ち上げにも似た充足感を得ることができました。さまざまな学問の発展に貢献する資料づくりに関わった経験は、自信であり誇りです。[資料に合わせ装置を設計]暗室のような空間で史料デジタル化のための撮影を行う園田さん。立命館大学のアートリサーチセンターで史料アーカイブ化に必要な知識やノウハウを学び、撮影装置は、研究室の全員で設計・製作しました。局報は厚みがあり、それに対応させるため細部までカスタマイズ。今年度中に撮影とデータ検品を完了する予定です。『史料デ STUDENT'S VOICEthe FILES OF ACADEMICS〜研究者の世界〜社会学を専門とする菅沼明正講師に、多彩な学問を発展させる国鉄史料のデジタル化事業について話を伺いました。地域共創学部 観光学科 4年園田 理子さん(大分豊府高校)122023 OCTOBER

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