23_九州産業大学_広報誌_vol
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文化の起源に社会学から迫る 『修学旅行(団体旅行)はいつはじまり、どのように広まったのか?』。そんな壮大なテーマを社会学の観点から研究しているのが、地域共創学部観光学科で教鞭をとる菅沼明正講師です。伝統文化の起源の探究は大学時代から続ける研究テーマの一つ。「現代では神社仏閣の建築や仏像を美術として鑑賞するのは当たり前の文化ですよね。でもこれは明治政府が国内に西洋の美術品に近いものを探した後に生まれたものです。同様に修学旅行も当時の社会状況や企業のプロモーションから社会に定着しました」。修学旅行と鉄道会社の関係を解明 戦時期、神武天皇即位の地とされる奈良県橿原(かしはら)に延べ3800万人が訪れたツーリズム現象がありました。この原因は長年謎とされてきましたが、菅沼講師は鉄道会社が保有する史料や関連物を調査することで解明。当時、皇室ゆかりの地への参拝が盛り上がったことに加え、鉄道会社が関東の学校で誘致の説明会を開いたことや、国鉄の旅客輸送の制限で伊勢神宮へ参拝するはずだった人が流入したことなどが理由だと突き止めました。この論文は鉄道史研究の進展に寄与する優れた業績に贈られる「鉄道史学会住田奨励賞」を受賞。 また、コロナ禍で修学旅行の是非が問われたことも相まって、菅沼講師の研究が注目を集めました。「修学旅行の是非は費用の面から議論されますが、近年は熊本県水俣市のように地域の活性化にも貢献しています。さまざまな角度から議論が必要です」。慶應義塾大学卒業後、同大学修士課程を修了、博士課程単位取得満期退学。慶應義塾大学講師を経て2020年より現職。専門は社会学で、主に近現代日本の観光と地域社会の形成や、ツーリズムの歴史社会学を研究している。趣味は温泉巡りとサイクリング。菅沼 明正講師 地域共創学部 観光学科近現代日本のツーリズムの成り立ちを鉄道会社の史料で読み解き、デジタル化により活用を広げるジタル化で学問に飛躍を』AKIMASA SUGANUMA112023 OCTOBER

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