PlusK_Vol.31
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7月21日(木)に、窯開きを行いました。2000年に始まった窯焚きも、今回で52回目となります。今回は、芸術学部・大学院芸術研究科の学生と九産大の陶芸教室参加者の作品、約500点が焼き上がりました。学生14人は、50度の熱気が残る窯の中から、取り出した作品の仕上がりを確認。今回も、実り多い窯開きとなりました。 「柿右衛門様式」とは、日本を代表する焼き物・有田焼の様式の一つ。佐賀県有田町は、日本の磁器発祥の地であり、江戸時代、多くの陶磁器がヨーロッパに輸出されました。中でも、乳白色の地に暖色系の色彩で日本的な絵が描かれた柿右衛門様式の作品は、ヨーロッパの王侯貴族に愛されました。今でもヨーロッパを旅すれば、宮殿に飾られた柿右衛門様式の壺等の作品を見ることができます。この柿右衛門様式窯が、九産大に作られたのは、故・第14代酒井田柿右衛門氏が九州産業大学大学院芸術研究科教授に就任したのがきっかけです。柿右衛門氏は、「学生たちに伝統工芸の奥深さを感じ取ってもらうとともに、九産大芸術学部のシンボルに」と、九産大に門外不出の柿右衛門様式窯を作ることを提案され、2000年10月に完成しました。 九産大の「柿右衛門様式窯」は、門外不出とされる柿右衛門家に伝わる設計図に基づき、本家のものより、一回り小さく作られています。窯の建物も、釘・金物は使わず木組みの伝統的なものです。2000年10月に完成して以来、年数回行われる窯入れは今年で52回目となり、学生たちが交代で薪を燃やし続けます。この窯は、温度管理が難しく、最適な温度を保つために、学生たちは一昼夜炎と向き合うのです。指導にあたる芸術学部の梶原茂正教授は、「この窯は、温度管理が難しい窯です。その分、作品の善しあしが、はっきり分かります。自分で窯に薪をくべて作品を焼くという貴重な体験を通して、伝統の力を再確認し、創作の力を磨いてください」と語ります。キャンパス内に薪窯がある大学は、全国的にもほとんどありません。学生の皆さんは、この貴重な環境を生かして、「原点に戻り、先人の足跡をたどる」思いで研鑽に励んでほしいと思います。また、この柿右衛門様式窯は、地域に開かれています。見学も自由ですし、秋の香椎祭では、学生の作品販売が人気です。ぜひ、この窯を通じて多くの方に焼き物への興味を深めていただきたいと思います。芸術学部生活環境デザイン学科梶原 茂正教授作品の善しあしがはっきり出るため、窯出しは、緊張と感動の瞬間有田古来の登り窯と単窯の機能を併せ持った薪窯です。敷地内には、柿右衛門家ゆかりの柿の木などが植樹されています「柿右衛門様式窯」専門の職人によって丁寧に作られた窯12+K 2016 Autumn

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