「入試を知る!」「学部・学科を知る!」
Web模擬授業

入試情報ホーム Web模擬授業 国際文化学部 アメリカ文学における 「スレイヴ・ナラティブ」のメッセージ

Web模擬授業

アメリカ文学における 「スレイヴ・ナラティブ」のメッセージ

国際文化学部 国際文化学科
学びのキーワード
  • アフリカ系アメリカ人
  • 人種問題
  • 女性の権利
  • 黒人奴隷
  • 多民族社会
  • フレデリック・ダグラス
  • ハリエット・ビーチャー・ストウ
  • アレックス・ヘイリー
  • ゾラ・ニール・ハーストン
  • トニ・モリソン

講義ポイント①

アメリカにはさまざまな人種の人が暮らしています。黒人、白人という呼び方がありますが、黒人のことをアフリカにルーツがあるという意味をこめて「アフリカ系アメリカ人」と呼ぶことが定着しています。こういった呼び方をポリティカリー・コレクト・ランゲッジといって、差別をなくそうとする運動から出てきた言葉です。かつてアフリカに住んでいた人が白人に誘拐され、奴隷船に乗せられてアメリカに連れてこられ、白人の農場で働かされたという歴史がありました。南北戦争後、アメリカでは奴隷制度はなくなりましたが、アフリカ系アメリカ人の人々は白人社会からの差別や貧困に長く苦しみました。こういった奴隷にルーツを持つ人々の声を「スレイヴ・ナラティヴ」と呼びます。それがアメリカ文学の中でどのように描かれていくかを味わうとともに、それらに込められたメッセージについて考えます。

講義ポイント②

フレデリック・ダクラスの自叙伝、ハリエット・ビーチャー・ストウの『アンクル・トムの小屋』、アレックス・ヘイリー原作のテレビドラマ『ルーツ』などの中の「スレイヴ・ナラティヴ」を見てみましょう。これらの作品から読み取れることは、まず多民族国家アメリカの文学においては、奴隷や奴隷のルーツを受け継ぐ人々とその語りがさまざまな形で存在することが分かります。そしてアメリカ社会全体の人種観の変化も読み取れます。世代を経るごとに「アフリカ系アメリカ人」であることの意味は変化しているのです。逃亡を企て、自由を手に入れようとする奴隷のスレイヴ・ナラティヴからは、何があっても生きていこうとする医師があるところには、当時のアメリカ社会の法規は意味をなさないことが分かります。

講義ポイント③

アメリカ作家であるWilla Cather、Zora Neale Hurston、Toni Morrisonなどの文学作品に描かれる「スレイヴ・ナラティブ」から読み取れるメッセージについて考察します。まず、アフリカ系アメリカ人にとっての迫害者・恩恵者を、人種というカテゴリーだけでは一概に判断できないことが分かります。また、命よりも個人の名誉と人格の尊厳を守ろうとする価値観の是非とそれに対する正解の不在が露呈します。「自由」であることは経済的に保証された生活よりも大切であるという価値観も読み取れます。そして、残酷な過去に向き合い、それを乗り越えながら未来に向かうことの必要性が訴えられています。

国際文化学部 国際文化学科

志水 智子 先生
専門:英米・英語圏文学
  • 講義内容がめざすSDGs