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  • 特集 ソーシャルデザイン学科 × 生活環境デザイン学科 鼎談

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今から10年前に誰が想像したでしょう。
グーグル、アマゾン、フェイスブックなどのITサービスを世界中の人々が自由に使いこなしている時代を。
私たちの想像を超えるスピードで進化・深化を続ける世の中は、
新しい生活スタイルを生み出し新しいデザイン思考を持つクリエーターを求めています。
九州産業大学は今までの枠にとらわれないデザイン感覚のクリエーターを育てようと
2016年に全国に先駆けて「ソーシャルデザイン学科」を創設。
そして、工芸デザイン専攻、プロダクトデザイン専攻、空間演出デザイン専攻の3つを統合した「生活環境デザイン学科」。
この2つの学科が目指す学びとは、また、社会が求めているデザインとは?
広告界の第一線で、社会の動きの一歩先を見続けてきた株式会社宣伝会議の取締役・田中里沙氏を迎え2学科の教授が語り合いました。

TANAKARISA
株式会社宣伝会議
取締役 田中 里沙(たなか りさ)
広報・マーケティングの専門雑誌「宣伝会議」編集長、編集室長を歴任の後、新規事業、事業承継、地方創生の研究と人材育成を行う。事業構想大学院大学(2012年文部科学大臣認可・学校法人先端教育機構)の教授を兼任し、2016年より学長に就任。
「クールビズ」ネーミング、2020エンブレム委員、伊勢志摩サミットロゴマーク選定委員等国や地域の審議会等委員、テレビ情報番組コメンテーターも務める。
田中 宣伝会議では、出版事業と連動し、クリエーター、マーケターの育成に力を入れてきましたが、昨今では「社会や地域を動かすことのできる」人材、教育への関心が高まってきています。
私は文部科学大臣の認可を得て2012年4月に開学した社会人向け大学院の事業構想大学院大学学長を2016年より兼任しています。自らの資源を生かして理想の姿を描き、その実現に向けてアイデアを考え続ける取り組みをしています。院生は事業を承継する人、企業内で新規事業を立ち上げる人、地方創生を狙う人等ですが、事業構想で一番大切なものが、クリエイティビティ、本日のテーマでもある大義の「デザイン」の力です。
人と人、人と地域、そして人と組織をつなぐコーディネーターも、普通にトライするとそれぞれの思惑の板挟みにあってしまうことが多い。しかし、デザインの考えを理解し、スキルを身に付けていると、一歩突き抜け、関係者を取りまとめるのがスムーズになるのです。本学は社会人が学ぶ場ですが、若い学部生の方たちにとって、目に見えないデザインを「生活環境をデザインする」「ソーシャルをデザインする」とわかりやすく定義し、基礎を学べる場があるのは素晴らしいと感じます。
inouekoichi inouekoichi
井上 貢一 (いのうえ こういち)
九州産業大学 芸術学部
ソーシャルデザイン学科 教授、博士(芸術工学)
専門:情報デザイン、認知科学
主な担当科目:情報デザイン概論、視聴覚情報論、Webデザイン実習
主な活動:地域社会を対象としたWebシステム導入支援
学会・団体:芸術工学会 副会長、日本デザイン学会 第5支部長、日本映像学会 会員、greenz people
Webベースの情報共有システム Webベースの情報共有システム
inouekoichi Webベースの情報共有システム
栗田 融 (くりた とおる)
九州産業大学 芸術学部
生活環境デザイン学科 教授、博士(芸術工学)
専門:空間演出デザイン
主な担当科目:立体構成、空間演出デザイン概論、
空間演出デザイン演習
主な活動:店舗や住宅等のデザイン、学生との空間演出プロジェクト
学会・団体:日本空間デザイン協会理事、日本基礎造形学会、
ファッションビジネス学会
ひた鮎やな場竹テントひた鮎やな場"竹テント"

栗田 生活環境デザイン学科は、工芸デザイン、プロダクトデザイン、空間演出デザインの3専攻があります。生活環境というと対象をとらえにくいので、「暮らしをデザインする」学科と説明しています。つまり、生活するときに必要な「衣食住」のデザインですね。 例えば「食」の場合、料理はデザインしませんが、調理、盛りつけ、食事、後片付けの時に必要な道具、器具、家電、食器、家具などのモノや空間の雰囲気作りまでがデザインの対象となります。要するに、人間の行為や場面(環境)をデザインすることであり、我々の暮らしをよりよくするためのデザインを学んでいると言えます。

田中

  • 田中 なるほど。「暮らしをデザインする」と紐解いていただくとよりわかりやすいですね。以前、宣伝会議から『ソーシャルデザイン』という本を出版しました。サブタイトルに「希望をつくる仕事」と入れました。地域の問題を扱う時に、地域は課題先進エリアと言われることがありますが、課題というよりも、そこに希望があると思っています。
  • 井上 私が担当しているソーシャルデザイン学科は、情報デザインと地域ブランド企画の2専攻がありますが、いずれも地域と関わる学びの場です。掲げているのは、"Think Globally, Act Locally"の思いです。情報は物理的な距離に関係なく世界を超えられるので、考える視点はグローバルに。そして、活動するのはローカル。つまり地域に根ざすのが基本です。
     地域には、たくさんの問題・課題があります。それをデザイナーが何らかの形で関わることで、変えていけないか。そこで、重要なキーワードになるのが「編集」です。例えば、ただの石ころでも、それを展示台に置くと純粋な造形作品として見えてくる。つまり「ものごとの関係を組み替えること=編集」が新しい価値、つまり希望を生むのだと思います。
  • 田中 具体的には、どのような学びができるのですか?
  • 栗田 生活環境デザインでは、人間を基軸にしています。その出発点として、自分があります。例えば、「まず自分の身体を測る」といった授業を行っています。自分を採寸して模型をつくり、その身体のまわりをデザインするという内容です。学生によってリサーチする視点に違いがあり、様々なアイデアが出てきます。その過程で、「意外と人間の頭は軽くもあり重くもある」なんて発見もあるようです。
  • 田中 「人間を基軸にしている」というのは面白いですね。ぼんやりしていた学びのイメージがクリアになってきました。生活環境をデザインしていく上で、対象者への気配り、気付き、どんな距離感にあるかといった点を想像し考えることは必須だと感じます。

井上

  • 井上 ソーシャルデザインも、自分が出発点です。社会にいきなりアプローチするのではなく、まずは自分の周囲3メートルのところから考えていきます。日常生活の中で感じる不便なこと、不快なこと…。1年目はそうした身近な問題に対する自分なりのアイデアを、様々なツールを使って目に見えるカタチにする。2年目はそれを大学キャンパス内プロジェクトへ、3年目は地域社会プロジェクトへ、そんなふうに少しずつ関わる世界を広げていきます。
  • 田中 ソーシャルデザインというと、ついつい大きなところから考えてしまいそうですが、「まずは身の回りから考えを広げる」そのプロセスも魅力的です。芸術学部と言うと、これまでアーティストやクリエイターのイメージが強かったのですが、生活にも仕事にも汎用性のあることが学べそうです。
  • 栗田 そもそも九芸は、総合大学の中にある芸術学部です。その誕生には、「学問の頂点は芸術である」という考え方があったと聞いています。新生した九芸でも、純粋な造形表現から社会までを繋ぐ各分野で学科を構成しています。そして、生活環境デザインも、ソーシャルデザインも、根っこにあるのはファインアート(純粋芸術)ですね。
  • 田中 仕事で、海外企業の社長にインタビューする機会がありますが、社会に価値を提供できる事業を構想している経営者は、その多くが芸術や文化をとても大切にしています。もしくは、パートナーに自身の考えを絵にしてくれる人、コミュニケーションのデザインをしてくれる人を選ぶ傾向があります。芸術や地域、つまり人間を深く理解できる人は、事業を推進して世の中に価値を生み出すことができるのでしょう。

栗田

  • 栗田 九芸に来る学生に求めているのは、変わりゆく社会の中で、常識や時には自分さえも疑っていく力ですね。それと同時に、自分の心がどう動いたのかなぜ動いたのかをあらゆる場面で探っていって欲しい。それは、人の心を動かすことに繋がっていくと思いますし、自分の感性にも影響すると思います。
  • 井上 そうですね。感性は人工知能が担えない部分です。簡単な作文や作曲ならAIにもできる時代、「教える・覚える」だけの職業訓練であれば、やがて「人間よりもAIの方が優秀だ」ということになる。でも、身体感覚で物事を見極めるということは人間にしかできないことだから、ますますその能力が必要となる時代がやってくるんでしょうね。
  • 田中 これからの時代に生きる力を、九州・福岡にある大学で学べるのは素敵なことです。活力のある街であると同時に、自然も豊か。さらに、アジアを見晴らす福岡は、歴史的に多様性に富み、クリエイティブな土壌も育まれています。「Think Globally」を体現できる魅力的な人財が、ここから間違いなく多く育つのではと期待しています。
集合写真 集合写真