科学は何百年のあいだ多くの成果をもたらしたが,最近になってその問題点もしだいにはっきりと現れてきた。科学の問題点は二つの側面からみることができる。
一つの側面は科学そのものに関わるもので,主に科学的思考および方法論に関係する問題である。確かに,科学の発展のどの段階においても問題が存在し,歴史的に見ればそれらはいずれ科学自身によって解決されたが,現在われわれが直面している多くの問題は科学的方法そのものから生じたものであり,科学は自らはたして解決できるだろうか。
もう一つ側面は科学によって引き起こされた結果に関わるもので,社会問題として現れた問題である。確かに現代の文明は科学技術を基礎に築かれたものであるが、その豊かさは主に物質的なものであり、人間の精神的側面が無視されている。このような豊かさは真の豊かさといえるだろうか。また、環境問題などに象徴されている多くの問題も科学・技術と深く関係しており、いま、科学を再検討する時期であろう。
科学的方法論は,還元主義,決定論および客観性という三つの特徴をもっている。科学的方法の一般的なプロセスは,実験・観察によって測定できる結果を把握し,その結果を還元主義的考え方にもとづき,論理的・決定論的な過程を経て,いくつかの基本的な理論や法則に還元するものである。
しかし、宇宙に存在するあらゆるものや現象はなんらかの関係が存在しており、その関係を分断し、無視したら、物事を理解することができなくなる。システム論は世界が分断できない全体であることを強調し,部分と全体,あるいは部分と部分間の関係の解明に関するものである。
本講義では、まず、科学的方法論の特徴を説明する上で、その問題点を提示する。次に科学的方法論の特徴と問題点はわれわれの人間社会に与える影響について述べる。最後に、科学の限界を克服するために、システム論的考え方の必要性について説明する。 |